エリアラ-2

□【オーシャン・ビーチ】
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残業終わり、派遣協会のエントランスで合流したアランが、ぽつりと言った。

「海が見たい」

しかし慢性的に人員不足の回収課にあって、当分ふたりに休みはなかった。アランも、それを承知した上で言ったのだろう。深い意味はないのかもしれない。しかし、エリックはアランの願いなら何でもきいてやる男だった。

「よし、今から行くか!」

「え?」

微かにしまった、と思った。海は見たいが、今でなくても良い。そんな台詞が喉から出かかったが、エリックはもう地下鉄のコンコースで、近くの浜辺への切符を2枚、買っている所だった。

いつもとは逆の路線、久しぶりのデートを、エリックも喜んでいるようだった。素直に顔には出ないが、いつもより幾分か饒舌だ。エリックも喜んでいるのなら、とアランは彼に従った。

*    *    *

──ザザ…ン…。

今まさに、太陽が水平線に落ちようとする所だった。わずかに空にたなびく雲に、鮮やかなオレンジ色が色彩を移し、まるで死神界のもっと上にあるとされる天上の国の景色のようだった。それを見て嬉しそうに笑うアランの白い頬も、オレンジに染まり、やがて一瞬のきらめきを魅せて、陽が沈んだ。

「綺麗だな…」

「…そうだな」

終始その笑顔を盗み見ていたエリックが、お前の方が綺麗だ、なんて言いそうになり、僅かに遅れて相槌を打つ。死神の永遠の命は闇だ、と思っていた自分がそんな言葉を吐きそうになるなんて、とエリックはやや目を伏せて自嘲した。

陽が沈んだばかりでまだ空は夕闇に青白く輝いていたが、やがて幾つかの海の家が明かりを消してしまえば、真っ暗になってしまうだろう。その前に、とエリックはアランの手を引いた。

「わっ。ど、何処行くの、エリック」

「見るだけじゃ、来た甲斐がないだろ」

言うと、波打ち際までアランを強引に引っ張っていく。
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