その他CP-1
□【スターフェスティバル】
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「ハイ、出来ました。先輩、一番高いトコに付けてくださいよ!」
有無を言わさず、ウィリアムの手に押しつける。
「全く…貴方は上司を何だと思って…」
ウィリアムは見るとはなしに短冊をチラリと目に入れると、ポーカーフェイスはそのままに、ふと首筋が淡く紅く染まった。顎をあげロナルドを睨み下ろし、何か言いたそうに唇が薄く開いたが、数瞬の後、黙ったまま背伸びして短冊を誰よりも高い所に結び付ける。
「??」
再び司朗は頭上にクエスチョンマークをまたたかせた。
「じゃあ、メインイベントも済ませた事だし、俺たちそろそろホテルに帰ります。このキモノ気に入ったんで、今日だけこのまま着て帰っても良いっスか?」
「ロナルド・ノックス!何を勝手に…」
「あ、はい。そんなに気に入って貰えて、俺も嬉しいです」
「と、言う事で。じゃあ、リクドウさん、お先です!」
ウィリアムの肩を後ろから掴み回れ右させると、ぐいぐいとロナルドはホテルの方向に向かって彼を押していく。ウィリアムが、小さな声で何事か文句めいた事を言っているのが聞こえたが、ロナルドはにこやかに司朗に手を振って、意に介さない。
礼儀にうるさいウィリアムが別れの挨拶もしないとは、何か余ほどの事情でもあるのだろうと、司朗は唐突な申し出にも、素直に笑顔を返した。
「はい、お休みなさい」
* * *
翌日司朗は、外回りの帰り、昨夜の七夕祭りの通りを辿っていた。祭りも終わり、願い事を吊るした竹が片付けの為に倒してある。
(そう言えばあの時、様子がおかしかったな。ノックスさんは何て書いたんだろう…)
好奇心に勝てず、分かりやすく一番上に結びつけられた短冊を手に取る。そこには、やや癖のある筆記体で『William T.Spears』と書いてあった。
「???」
司朗は三たび、首をかしげた。
End.