その他CP-1

□【スターフェスティバル】
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*    *    *

「やっぱ似合いますよ、スピアーズ先輩!」

「貴方は似合ってませんね。ロナルド・ノックス」

二人の掛け合いに、司朗はクスリと笑った。

「お二人とも、エキゾチックで素敵ですよ」

ウィリアムは灰色に黒の矢がすり模様、ロナルドは暗褐色に濃紺の市松模様の浴衣だった。身長こそ違え、すらりと手足の長い二人に浴衣の図は、異国情緒あふれてかなり目立つものだった。

その恰好で人間界におり、色取り取りの行燈が並ぶ通りをそぞろ歩く。同じように、だが男物よりは格段と華やかな柄の浴衣を着た道行く女の子たちが振り返り、「見て見て、恰好良いガイジンさん」などとさんざめいている。言葉は分からないながらも注目を集めている事を意識したロナルドは、小さく手を上げ「ハーイ!」などと返している。

「綺麗っスねー。来て良かったっスね先輩。可愛いコもいっぱいいるし」

ロナルドの言葉には答えず、ウィリアムは司朗に尋ねた。

「…シロウ・リクドウ。先ほどから目にする、キモノを着た男女のアート・キャンドルには、何か意味があるのですか?」

「ああ、はい。織姫と彦星といいます。年に一度七月七日にだけ、天の川を渡って会う事が出来る恋人同士だという伝説なんです」

愛想を振りまく事に専念していたロナルドだが、それを聞くと頓狂な声を出した。

「年に一度だけっスか!?死んじゃいますよ俺」

「勝手に死になさい」

「?」

その会話の意味が理解できず、司朗は少しためらった。だがすぐに、ウィリアムが取り繕うように咳払いをして言った。

「そんな伝説の日に、たまたま日本支部に当たるとは奇遇ですね」

ウィリアムの場合、明らかに社交辞令だが、それでも司朗は微笑んだ。

「そうですよね!ですから、ぜひ楽しんでいって頂きたいと思って。…あ、願い事を吊るす竹です。書いていかれますか?」

「願い事なぞ、人目に晒すものではありません。私は結構です」

「あっ、俺は書きます!今日、欲しいものを書けば良いんスよね?」

司朗は苦笑し、

「いえ…それはクリスマスですけど」

しかしロナルドは、もうサラサラと書き始めている。

「ま…それも願い事だし、良いか」

呟いた。
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