その他CP-2
□【Family Ties】
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「エリック。今日ね、体育でアイキドウやったよ」
あの日以来、アランの口癖は、「エリック。今日ね」になった。毎日の出来事をこと細かく俺に話して聞かせ、屈託なく笑う。初めて会った時の緊張感が、嘘のようだった。
「へえ。ニッポンの武術だろ?」
「うん。攻撃の為の武術じゃなくて、襲ってくる相手の力を利用した、身を守る為の武術なんだ。面白かった」
「良かったな。お前可愛いから、習っといて損はねぇな」
「また言った!」
途端にアランが、不機嫌そうな声を出す。
「男だから、可愛いなんて言われても嬉しくない!」
「仕方ねぇだろ。可愛いもんは可愛いんだから」
俺はアランが拗ねるのを分かっていて、言葉を重ねる。こんな時のアランはいっそう可愛かったし、他愛もない口喧嘩は良いコミニュケーションの材料だった。
「俺は、早くエリックを守れるようになりたくて習ったんだ!」
いつの頃からか、アランはそんな生意気を言うようになっていた。でも俺にとってアランはいつまでも、出会った時の子供のままだったし、俺がアランを守ってやるつもりだった。
「そうだな。一人前の死神になったら、守られてやっても良い」
笑いを噛み殺しながらサラサラとしたブラウンの髪を撫で付けてやると、アランはぷうと頬を膨らませた。
「死神派遣協会の新人になったら、その子供扱いやめてくれる?」
「試験に受かったら、な」
「ズルい。あと二ヶ月は子供扱いじゃないか」
アランは卒業まで一ヶ月を残し、トップクラスの成績で死神派遣協会を志望していた。新人教育と試験期間は一ヶ月あったが、アランの事だから難なく合格するだろう。そうしたら、アランと同僚だ。もうこんなやりとりはやめなくては、アランがグレてしまうかもしれない。少し残念だったが、親としては誇らしい気持ちだった。
「俺、エリックとパートナーになるんだ」
「大きく出たな。俺は問題児だから、まだ誰ともパートナーを組んだ事がないんだぞ。人事が許す訳ねぇ」
「俺なら許すさ。エリックの扱いは心得てるもの」
「言ったな」
「わっ」
ベッドに押し倒すようにアランの首に腕を回すと、高い笑い声が上がった。俺のアラン。お前は、急いで大人になろうとしている。まだ良いんだ…良いんだ、子供のままで。アラン。