その他CP-2
□【Family Ties】
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「はい。覚えててくれたんですね。父は、親友だったのはもう随分と前だから、覚えていないかもしれないと心配してました」
アランは頬を綻ばせる。流石に『恋人』だったとは書かなかったらしい。あのヒトが死を自覚した時に、俺との約束を思い出してくれたのが嬉しかった。…待てよ。継ぐべき家はどうなったんだ?
「アランお前…俺の所になんて来て良いのか?家は?」
「お爺様は、俺を跡取りには認めませんでした。母が、貴族ではなかったから。家は、弟に継がせると言っていました」
顔をよく見ると、スッと通った鼻筋や、形の良い薄い唇なんかがあのヒトにそっくりだった。俺は目を細めて面影を懐かしむ。
「エリックさん…貴方が、僕の父さんなんですよね?」
「何でそう思う?」
「だって…幾ら親友だったからって、百年も会ってない男性の所へ行けなんて、変だから」
俺は何と答えたものかと、口元を掌で覆ってしばし考えた。
「それは…約束だったからだ」
考えた末、俺はある程度、正直に話してしまう事にした。
「約束?」
「ああ。俺とお前の親父は親友だったが、身分が釣り合わないからある時、もう会わない事にした。その時、自分が死んだら子供を引き取って欲しいと頼まれたんだ。もうその時、病いを患っていたんだろう」
「…そうですか」
それを聞いた途端、落胆の色がアランの口角を下げた。俺は何故だか慌てて、弁明していた。
「いや、血は繋がってないが、お前は俺の家族だ、アラン。それほどあのヒトと俺は、強い絆で結ばれた親友だった」
「俺…ここに居て、良いですか…?」
「ああ。すぐに転校の手続きを取ろう。俺の事はエリックと呼んでくれ。家族なんだから、敬語を使う必要もない」
「…うん。エリック」
何処か不安に揺れていた瞳が弓月のように細められ、アランは花が咲くように初めてふっくらと微笑んだ。