その他CP-2
□【Vieler glücklicher Umsatz des Tages】
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「ボクの計算では、午前八時半までが賞味期限だ!それまでに食べて欲しい、シエル」
「だから、朝食を食べたばかりだと…」
「ん?」
その時、見下ろしていたシエルを見上げる位置に来たサリヴァンが、疑問符を上げた。
「今度は何だ?」
その好奇心に食い入るような視線に、シエルが怯む。
「はは〜ん…」
胡乱な流し目で、サリヴァンが若干頬を染めて唸った。表情は、恥らいというよりも、興奮といった所か。
「シエルお前、さては執事とデキているな。誕生日プレゼントとか言って、さぞ励んだんだろう。胸いっぱいで、ボクのケーキなんか食えないって訳だ」
瞬間、シエルがカッとその大きな碧眼を更に見開いて怒鳴った。
「馬鹿を言うな!な、何で僕がセバスチャンと!!」
人間というものは、図星をさされると思わず高揚してしまう生き物だ。サリヴァンが、コロコロと鈴を転がすように笑った。
「その寝不足な顔と、首筋の絆創膏を見れば一目で分かる。ああ安心しろ、リジーには内緒にしておいてやるからな!」
「なっ…!!」
真っ赤になったシエルが可笑しいのか、サリヴァンはレディとしてははしたないほど声を上げて笑っては、シエルの手に生クリームが滴るケーキらしきものを押し付けていった。
「部屋に帰るぞ、ヴォルフ!どうやらボクらはお邪魔虫らしい!」
嵐のように彼らは去って、ボタボタと生クリームの滴るケーキらしきものだけが、シエルの手に残された。
「……………………ブフッ」
思わず噴き出したセバスチャンとは対照的に、シエルは瑞々しい頬を林檎のように染めたまま、唇だけをパクパクと動かしていた。
「さすがサリヴァン様、化学者とはかくも観察眼に優れていらっしゃる」
「セバスチャン!お前のせいだぞ!何を笑っている!!」
「お諦めください。サリヴァン様は、坊ちゃんの反応で、もう確信していらっしゃいます。あそこで激昂などしなければ、少しはマシだったかと…」
「僕のせいにするな!!」
「…いいえ」
思いがけず、声色を低く変えて囁くと、セバスチャンはシエルをふわりと抱き上げた。