小話纏め-1
□【受付】
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朝礼での申し送りを聞いて、エリックはひとり色を変えていた。
「何で回収課のアランが、よりによって『受付』なんですか!」
上司に食ってかかるが、
「仕方がないだろう。私だって、上からの申し送りを伝えただけだ。受付嬢が急病だとか…」
間にデスクがなければ掴みかからんばかりの勢いのエリックに、上司がわずかに椅子ごと後退る。
「アラン先輩『だから』じゃないっスかね。受付は協会の『顔』ですし」
「そうネ。アタシじゃ華はあっても、個性的過ぎて受付は勤まらないワ。アランが無難よネ」
妙に納得する二人をよそに、エリックはひとりブツブツと呟いていた。
「受付っていったら…受付っていったら、他社の来客からのナンパ率が半端ないじゃないか…」
「経験からくる言葉っスかね」
毎朝の日課、合コンで知り合った女子派遣員への『おはようメール』を携帯片手で素早く器用に打ちながら、ロナルドが言う。
「過保護なのもいい加減にして欲しいわよネ〜」
伸ばして綺麗に紅く染められたネイルを爪ヤスリで整えながら、グレルが呆れを通り越して半ば無関心気味に言う。
「エ、エリック。俺は平気だから…心配しないで」
エリックの剣幕に圧倒されていたアランが、ハッと我に返りなだめる。
「アラン、お前、電話番号とか聞かれても教えるんじゃねぇぞ」
「うん」
「あ、あと食事の誘いも断れよ!」
「分かった、分かったからエリック…」
周りをはばからぬエリックの過剰な心配に、アランは微かに頬を上気させ口籠もった。
「「勝手にして」」
ロナルドとグレルが、それぞれの作業に没頭しながら、異口同音に呟いた。
* * *
「こんにちはっ、本日はどういったご用件でしょうか?」
その日、来客にニッコリと微笑むアランを、
「ああ…アラン、そんなに笑顔を安売りすんじゃねぇ…」
ロビーの柱の影から、一日中、エリックがハラハラと見張っていたというのは、回収課全員が見かけたという話。
End.