†拍手BOOK†

□裏表ラバーズ
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いつもの授業。

いつもの部活。

だが今日はいつもとは違った。

赤い髪のあいつが俺を見ながらニッコリと笑ってやがる。

どういう事だ…?これ。

意味分かんねぇ。

しかも可愛いと思ってる、俺がいる。

はっ!?どうした俺?!

これは眼科に行くべきだろうか…。

俺は悶々としていると、ハッとして、ベッドの上に寝ていた。

夢か…よかった…。

だが、俺はまだ知らなかった。

ある得体の知れないモノに侵されている事は…。







眠たい眼を擦りながら、俺は自転車に乗り、いつもの学校へ急いだ。

そして、いつもの授業が始まる。

つまんねぇ…。

つまんねぇから俺は早々と、部室へと直行した。

部室のドアを開けた瞬間、あの夢を思い出し鼓動が早くなった。

俺…病気?

そこには、赤い髪のあいつがいた。

しかも、眠ってやがる。

ちくしょう…。

しかし、俺の気持ちとは裏腹に、俺はどあほうに近付き、頬を触ってしまう。

な…何してんだ!?俺!

やっぱ病気か…?病気なのか?これなら、朝早くから行くべきだった…。

こんなに嫌なのに俺の手は、このどあほうの髪を優しく梳いた。

おい!訳分かんねぇ!

嗚呼…どあほうなのは俺だ…。

そんな事を思ってると、いきなり部室のドアが開き、俺はドキッとして恐る恐ると振り向いた。

入って来た人物は、先輩(彩子)だった。

「あら?流川。珍しいコンビでいるじゃない」

コンビとか言うな。胸糞悪ぃ…。

彩子はそう言うと、ニヤニヤして入って来る。

「しかも触っちゃって、どうしたの?」

先輩(彩子)の言葉を聞いた途端、俺は勢いよく、このどあほうから手を離した。

どうしたの?って、こっちが聞きてぇよ!

だが俺は、この胸の内が俺には分からず、先輩(彩子)に聞いてみようと思い、意を決して言ってみた。

「あんたとこんなに話したのは初めだわ」

先輩(彩子)は驚いた顔で、俺を見ていた。

悪かったな、口数少なくて…。

いや!何を思って聞いたんだ?俺は…。意味不明だ。

そして、彩子は笑うと

「あんた桜木花道の事を好きなのね」

と言いやがった。

先輩(彩子)の目は節穴ですか…?

何処をどう見たら好きだと思うんだ。

俺が睨むと、また彩子は笑い出し、痛いくらいに俺の肩を叩いて、視線をどあほうに向けると、どあほうの頭を撫でた。

「この子は人を引き付けるのね。なんか、この子に皆が惹かれてるみたいな?羨ましいわ」

先輩(彩子)、意味分かる様に話して下さい。





俺は訳が分からぬまま、いつもの部活を勤しむ。

そして、いつもの居残り練習。

その居残りで、あのどあほうも毎度の如く残っている。

張り合ってんじゃねーよ、どあほうが。

しかし、今日の俺は練習する事なく、どあほうが練習する姿を見つめていた。

どうした?!俺は!

「この天才の良さに気付いたのかね?キツネ」

どあほうは気付いたのか、ニヤリと笑いながら言ってくる。

「ちげー。別の意味で意識して見てんだ」

は!?俺の口が勝手に、そう答えてしまった。

俺…病院に行って、口を糸で縫ってもらおうかな…。

「は?意味分かんねぇ」

どあほうが聞いてくる。

俺は手で口を塞ぎたかったが、体が勝手にどあほうに近付くと、どあほうの唇を俺の唇で塞いだ。

俺は自分の行動に驚いていた為、どあほうと目が合う。

塞ぎたかったのは、そっちじゃねぇー!

そして俺はどあほうを見つめると、口を開いた。

「こういう意味だ」

どういう意味だー!俺!

「な…何しやがる!気色悪ぃ事すんな!俺のファーストキスを返せー!」

それはこっちの台詞だ。

俺だってファーストキスだった…。くそっ!

どあほうは涙目になりながら、俺を睨みつける。

分かる。俺だって、そうする。

だが、そんな俺の体は、どあほうを抱き締めた。

「好きだ。付き合え」

警察官ー!ここに偉そうな変質者がー!って、俺だ…。

「ふ…ふぬー!」

そう言ってどあほうは、真っ赤な顔をして力一杯俺を押し退けた。

「変態ホモギツネ!」

どあほうはその一言を言うと、急いで出て行こうとする。

だが、俺は生まれて初めて叫んでしまう。

「ホモじゃねぇ!」

そう、そうだ。俺はホモじゃねぇ。

「俺は…桜木花道が好きだけだ!」

一緒の意味じゃねーか!アホかー!

どあほうは聞いたか聞いてない内に、体育館の入口をバンッとでかい音をさせて出て行ってしまった。

なんて事を仕出かしたんだ…俺。

病院に行こう。





それから月日が経ち、どあほうは俺を見る度、顔が赤くなっていた。

何故?と思っていたら、ある日の事、どあほうは俺の事を好きと言ってきやがった。

あれからどあほうは、ずっと考えていたらしい。

猿でどあほうなのに感心する。

そんなこんなで、晴れて俺達は付き合う事になってしまった。

好きと言われた俺は、嬉しさで一杯だったとは…思ってもみなかった。

俺はあの夢から桜木というモノに、侵されていたのかもしれない。

END

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