中編

□好きですよ、先生
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「はとこ!?」


『あたしもびっくりしたわー!』


夏休みは終わり、今日から二学期。
先ほど始業式は終わり、今は帰路についていた。

そしてやっとナミにあの日のことを話している。
さすがのナミもこれにはびっくりしているようだ。



「確かにはとこなら一緒に買い物していても言い訳できるわよね。」


『ねー。しかもさ、先生の家はあたしの家の近くだったんだよ。』


「親戚なら家が近くでもおかしくないわね。」


先生は実家から通っている。理由はお金が勿体ないから。(これは先生を好きな人にとったら常識)


『そういえばたまにお母さんの友達っぽい人が来てたんだよね。もしかしてあれって先生のお母さん!?』


「その前にその人誰?とかお母さんに聞きなさいよ。そしたらもっと早くわかったのに!」


『やー…なんか昔っからよく来てたからいいかなーって…。』


あのおばさん、めっちゃ家に溶け込んでいたんだよね。




「名前のお母さんもよく黙っていたわね。普通喋りたがらない?」


『卒業までばれるかばれないかおばさんと賭けしてたんだって。』



お母さんはばれない方へ、おばさんはばれる方へ。

賭けはもちろんお母さんの負け。
あの日の夜の機嫌は最悪だった。寝るまでプープー言ってて五月蝿いのなんの!


「でもよかったじゃない。」


『え、何が?』


「先生と接点持てて良かったって言ってんのよ。」


『…まぁ…。』


「…?どうしたの?」


ナミの言う通り、接点があった。
でも…。




『親戚っていいのかな…。』


人間何処かでは血は繋がっている。
今は法律で決められているからはとこであることは何ら問題無い。


『だけど血の繋がりがあるって結構大きな壁だよ…。』


ナミは大きな目をさらに大きくした。


「何言ってんの、なんなら従兄弟同士の結婚だっていいのよ?
それに、はとこってほとんど血の繋がりは無いようなもんじゃない。」


あんたらしくない、と背中を強く叩かれた。


『うーん…。』


「血が繋がってようが何だろうが別にいいじゃない。好きなんでしょ?」





『…そうだね…。』


兄弟同士で好きになる人だって世の中にはいるんだ。主にお隣りのエースくふん。(奴は完璧に一方通行だけど)



『うん、はとこがなんぼのもんじゃい!!そんなの関係ないね!!』



「それでこそ名前よ。」


ナミは納得したように頷くと立ち止まった。
ここであたし達はお別れだ。



「じゃ、また明日ね。」


『うん、バイバイ!』


ナミの背中を数秒見送るとあたしも歩き始めた。








『(……はこと、ね…)』


ナミには、はことを理由に落ち込んでいるように説明した。
勿論落ち込んでいた理由はそれもある。
けれどそれだけじゃない。







「馬鹿みたいに明るくて、前向きで、料理が上手いやつかな。」





あたしが先生に片想いしているように、先生も片想いしているんだってこと。
伊達に夏休みボーッとしていたわけじゃない。(進路だって考えましたわよ)

夏休み前、その事を知ってもなんともなかった。
でも今回のはとこ事件≠ナちょっと頭が冷えたんだ。


恋は障害があるほうが燃えるーってシャチに豪語していたけど。
先生の大切な人を乗り越えてやるーって馬鹿みたいに叫んで意気込んでいたけど。



『(先生にも好きな人いるんだよなー…)』


大切な人のことを屋上で聞いた時、本当は少しだけ心が痛かった。
先生をあんなに幸せそうな表情にしてあげられる、顔も知らない女性が羨ましかった。





『はは……、』



皆あたしをタフだと言う。
それはあたし自信も思っていたことだった。

けれど先生に対する想いが大きくなるにつれてその自信≠ノ余裕なキャパが無くなっていったのがわかる。









『全然、大丈夫なんかじゃないよ…、』


最近は空元気。
虚しくなるだけ。






それでも、

























ドンッ……







『うわ…!?』


「ッ……?
な、なんだ、名前か。」


『先生…?』




それでも、




『すいません!大丈夫ですか!?』


「ああ、こっちこそ悪かった。」


『てかこんなところで何やってるんですか?』


「お前の家に用があったんだよ、俺の母親が…ってどうした?」


『はい?』




もう少しだけ、




「いや…少し目が充血しているぞ?」


『…先生、恋って難しいですね。』


「…なんだ急に?」




好きでいてもいいですか?




『いえ…お互い頑張りましょうよ!じゃ、また明日!』


「は?おい、名前!」

















(この気持ちは本物なんです)
 

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