中編

□テスト期間ですよ、先生
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『むりむりむりむり。』


「ダメだ。」


普段いい子のあたしが何故大好きなペンギン先生に駄々をこねているかといいますと。






『頭パーンします。あたし数字を見ると頭パーンするんです!』


「大丈夫だ。今まで数字を見ただけで頭パーンした人間はいない。」


『じゃああたしがその第一号者になります。』


「ならなくていい。ゆっくりでいいから解いてこい。」


差し出されたプリントの束。そのプリントの上には訳の解らない数字がびっちり。

授業は出ていました。ええ出ていましたとも。だけど見ていたのはお勉強道具なんかじゃなくて先生の方。
あのチョークを持つ手がいい感じにエロいのよ。



「…名前。」


『んえ?』


「80点以上取ったらご褒美をやる。だから何がなんでも赤点取るな留年するな。」


『がんばります!!』


「(単純なやつ…。)」



ご褒美…!!
先生からのご褒美…!!
これを聞いて頑張らないわけない!!


『ご褒美はなんですか!?内容によってあたしの頑張り具合が変わってきます!』


「それは内緒だ。」



ペンギン先生の悪戯っ子な笑顔。
それ見ただけでやる気が湧いてきたあたしは相当安い女です。


「というか、お前よくこの学校受かったな。」


『それはサボの賜物です。彼はよくやってくれました。』


「あいつも大変だったな。」


『今からも大変ですよ。なんせこのプリント全部説明してくれなきゃなんですから。』




ペンギン先生は少し眉間にシワを寄せると座った。



「…サボは忙しくないのか?」


『…そういえばレポートが多くて大変そうですね……。』



…もしかして今回サボに手伝ってもらうの無理…かも……。
やば……!!




「じゃあ家でやるわけにはいかないな…。」


専属の家庭教師が忙しいんじゃ宿題に出来ないな、と呟いて先生は教科書を開いた。






「ほら、やるぞ。」


『ほ……?』


「何処から出ているんだその間抜けな声は。」


『間抜けですと!?』


まぁよくロー先生にも言われるから慣れたって言えば慣れたんだけど。




『や、でも先生も仕事が…。』


「いいから。名前の成績の悪さに比べたら俺の仕事なんてなんともない。」



『ひどっ!』


「ほら、これから解いてみろ。」


ご褒美いらないのか?と、笑顔で仄めかしながらあたしの前に再びプリントを置いた。



けどね。













『………先生…。』


「……ハァ……。」



サッパリわかんないんだよ。




「お前………。」



あぁ、もう泣きそう。



「他の教科は?」


『え?』


「他の教科もこんな状態なのか?」


『数学だけです…。』


「唯一の救いだな。」


そりゃ数学は先生ガン見ですから。




「…テストまで残り一週間だ。」


『ですね。』


「名前、これから毎日放課後はこの数学準備室に来い。」


『…んへぇ?』


「さっきから間抜けな声しか出せないのか?

これからテストまで俺とみっちり勉強だ。」


















みっちり














『はい!!よろしくお願いしまする!!』


先生独り占めとかオイシ過ぎる!!


「ただし、俺の指導は厳しいぞ。」


『大丈夫です!あたしどっちかって言うとMなんで!』


「誰も聞いていない。」
















































開始30分後――――








「これはさっき説明しただろ。もう一回だ。」


『(鬼畜すぎる…。)』


「…名前。」


『は、はい…?』


「最初に言っただろ。」


先生の真面目な顔付きが口元に綺麗な孤を描いた。





「俺の指導は厳しいぞ、てな。」






テストからも先生からも、もう逃げられません。

















(80点以上のご褒美はびっくる3本でした)
 

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