中編

□愛していますよ、先生
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「何?それ、誰の弁当?」


『…ペンギン先生の。』


卒業式まで1ヶ月を切った。
そんなギリギリになって初めて手作りお弁当を渡します。




「なんでまた急に?あんた今までそんな素振り全く見せなかったじゃない。」


『う、うん…。
あのさ、昨日家におばさんが来て……。』


「おばさんって、先生のお母さん?」


『そ。それで先生が最近忙しくてほとんどご飯食べてないって言ってたんだ。』


「なるほど。それで作ってきたと。
名前って女の子になったりおじさんになったりで忙しいわね。」


『いつおじさんになったっけ!?』


「屋上でびっくる飲んでいるとき。
っていうかもうお昼休み入ってるわよ。速く渡しにいきなさいよ。」


『ちょ…!』


教室の出入口までナミに背中を押された。


「…もしかして恥ずかしいの?」


『う……。』


一気に顔へ熱が集まるのがよくわかる。


「今さら!?照れるタイミングおかしいわよ!あれだけ散々声かけておいて弁当で照れるの?」


『だって先生のタイプって料理が得意な人なんだよ!?
そりゃ緊張するよ!』


「あたしは美味しいと思うけど…。」



『…マジっすか?』


「ええ。だからとっとと行って来なさい!」


ナミの珍しい誉め言葉に感動していたら部屋から叩き出された。
もしかして嵌められた?





『(仕方ない、行くだけ行ってみようかな。)』


あたしは玉砕覚悟で数学準備室へ向かった。







――――………


















『(来たけど…。)』


先生今居るのかな?

でもいたとしても何て言って渡したらいいの!?
やっぱり今日のあたし乙女!





『(何とかなるよね…!)』


迷って五分。
女、名前行きます!




ガチャ




『自動ドア!?』


「残念ながらそんなハイテクな教室じゃないな。」


ノックしようと手をあげたら大好きな人が出てきた。



『今から何処か行くんですか?』


「いや、人の気配を感じたからな。」


『気配って…先生は忍者ですか。』


「ただの教師だ。」


疲れたように笑う先生は前より痩せて見えた。


「それで、何か用か?」


『え!?はい、まぁ…。』


「そうか。だったら中に入れ。」


そう言ってあたしが入れるようにドアを大きく開けてくれた。














「で、どうした。」


『その…。』


や、やっぱり気まずい…!


「早退か?」


『え?な、なんで、早退に繋がるんですか!?』


「鞄抱えているじゃないか。てっきり早退かと……。」


『違います!あたしは弁当を持って来たんです!』


「弁当?」




い っ ち ゃ っ た ☆




「お前、こんなところで弁当食べる気か?」


『持ってきたのは先生の分ですよ。』


「俺の?」


鞄を漁ってあたしのより大きな弁当箱を出した。


『き、昨日おばさんが家に来たんです。
それで先生がこの頃忙しくてご飯をまともに食べてないって言ってたから…。作ってきたんです。』


弁当箱を差し出した。






「……………。」




…なんか先生固まってない?
もしかしてアウト?



『先生?』


「……。」


『せんせ―?』


「…っあ!?」


『大丈夫ですか?』


手のひらを先生の目の前でヒラヒラさせることによってこっちに引き戻した。


『もしかして迷惑でした…?』


「いや、そんなことはない!」


普段冷静な先生が声を荒
げて否定する。


「驚いただけだ…。」


『え?なんか言いました?』


「…空耳だろ。」


先生はあたしから弁当を受け取ると椅子に座って早速広げた。























(受け取って貰えたよナミイイイイイ!!!)
 

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