禁書目録

□一方通行「『アイテム』に、潜入だァ?」
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人気のない廃ビルで、四つの影が蠢く。
太陽はとっくに沈み、代わりに月が顔をあげていた。

「はい、あなたには『アイテム』へ内部調査を行ってもらいたいと思います」

その中で、一つの影が口を開いた。
パッと見、普通の好青年、この場に似つかわない風貌。

名前は海原光貴。

いや、正確には、海原光貴の―――文字通り―――皮を被ったアステカの魔術師エツァリである。



そのエツァリに、目の前の白髪の影は、鬱陶しそうに前髪をかきあげ、言葉を発する。

「なンで俺がそンなメンドクサイことをしなけりゃならないンですかァ? つゥかよォ、潜入はオマエの十八番だろうが」

彼の名前は『一方通行』。

科学が異様に発達している学園都市の、7人しかいない『レベル5』。位は、最も高い第一位。

勿論本名ではなく、彼の能力の名称に過ぎない。

しかし、当の本人すら本名をどうでもいいものと思っているので、皆彼のことをそう呼ぶ。


「そう言うな。上からの伝令だからな」

「信じられないのはこっちも同じよ? 血の気の多い一方通行じゃ潜服なんかできっこないってね」

ここに来てずっと黙っていた二人が口を開いた。

一人は、いかにもチンピラといった風貌の青年、土御門元春。

そしてもう一人は、現在最も『レベル5』に近いであろうと言われている、結標淡希。

「……という訳なんです」

やれやれ、とでも言いたげに、エツァリはお手上げのポーズを見せた。

「…………………」

それでも、一方通行はあからさまに不満そうな顔をしている。

「もう一度言う。上からの伝令だからな」

守るべき大事なもの抱えている一方通行。
引き受けないわけにはいかなかった。

「……わァったよ。ヤりゃいいンだろ、ヤりゃァ……」

結局、その仕事を引き受けることにした一方通行。
終始、苦虫を噛んだような顔をしていたのだが。



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