book2

□晴れのち曇り時々恋模様
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むぅ・・・・



つららはまたしても不機嫌だった

その理由は言わずもがな

目の前の光景にあった

仲良く並んで歩く幼馴染達

他愛無い話に相槌を打ち、時に一緒に笑い合う姿は見ていて微笑ましいものがある

しかしつららの心は暗雲渦巻く嵐の前のようにどんよりと重かった



なんか、前にも増して・・・・



二人は急接近しているのではないか?

つららの頭にふとそんな疑念が過ぎった

そんな筈は無いのに、と頭のどこかが訴えてはいるのだが

目の前の二人を見ているとどうしても疑ってしまう



まさか二人はもう・・・・



つららは耐えられない思考に思わず頭を振った

「どうしたの及川さん」

すると前の方から心配そうな声が聞こえてきた

慌てて顔を上げると、首をかしげてこちらの様子を伺っているカナと目が合った

「あ、いいえ別になにも・・・おほほほほ」

つららは本日二度目の誤魔化し笑いを目の前のカナに披露した

「そう・・・ならいいんだけど」

そう言いながらつららを見るカナの視線はどこか探るようだった



人間にまで気づかれるなんて・・・・まさか?



つららははっとして、カナの隣の人物に視線を移した

すると案の定、リクオもこちらに訝しげな視線を向けていた



はうっ!



まずいとつららは冷や汗を流した

今一番気にかけてもらいたくない相手がこちらをじっと見ている

「どうしたのつらら?」なんて聞かれた日にはどう答えていいかさっぱりわからない

自分自身、持て余すこの感情を正確にリクオに伝えるには今の自分では困難だ



伝えるには伝えられるのだ

だが・・・・



恥ずかしくて言えません



つららはリクオが聞いてこないようにと心の中で祈った

ぎゅっと目を瞑っていると、リクオが声を掛けてきた

きた!と思ったつららは次の瞬間拍子抜けする

「どうしたのつらら、置いて行っちゃうよ?」

リクオのあまりにも自然な言葉に、身構えていたつららは一瞬呆気に取られる

「ほら、つらら早くしないと真っ暗になっちゃうよ」

そう言ってつららの手を取るといつもの笑顔を向けてくれた

驚いて見上げると既に辺りは薄暗くなりかけており、そしていつの間にか家長カナは居なかった

よく見ると、ちょうどそこは家長との分かれ道

先にカナは帰ってしまったようだ

つららは何故だかほっと安堵する

「ほら、つらら」

「あ、はい」

焦れたリクオが催促すると、つららは慌てて返事をして歩き出した

一人で身構えていた自分がなんだか恥ずかい

つららはマフラーにこっそり顔を埋めるとリクオに引かれるまま歩き続ける

手に伝わるあたたかい温もりにほんのりと頬を染めながら



ああ、こんな事で沈んでいた気持ちが軽くなるなんて



我ながら現金だと思いつつ、つららは繋がれた手を見つめながら家路へと急いだ







う・・・・



つららはいよいよもって自分が重症だと認めざる負えなくなった

目の前には毛倡妓

そしてその先にはリクオ

この珍しい組み合わせの二人に、つららの心中は穏やかではなかった



毛倡妓にまで嫉妬するなんて!



つららは愕然とした

別に二人は恋仲ではない

まして仲の良い友達でもない

単なる主と側近

しかも毛倡妓にはその気なんてこれっぽっちもない

彼女の心の中にはいつだって彼がいるのだから

そんなことは十分承知しているのに二人を見た途端、何故か胸の中がざわついてしまった

沸々と湧き上がる苛立ちにつららは抗えない

これ以上見ていたくなくて、くるりと踵を返すと足早にその場を去った



「あれ?今のつらら?」

「え?」

つららが背を向けて走って行く背後では運悪く気づいた二人の主従が不思議そうに首を傾げていた


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