小さいモノ
□小さいモノB
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※空穂視点
迂闊だった。
真っ先にそう思った。
『次に狙われるのはきっと・・・陸也君だよ』
静かにそう告げたのは、先ほどまで俺の部屋にいた深月だ。
狙われる・・・すなわち、制裁。
そう言った彼の表情は、今までに見たことのないくらい真剣だった。
そして、このあとに続いた言葉に俺は驚く。
『そしてその制裁役となるのは、多分、うち』
うち、というのはつまり、深月が仕切る会長の親衛隊のことだ。
どうやら今回のお話は、心穏やかにお茶、なんてことにはならないらしい。
そう感じてきたころ、深月は申し訳なさそうに眉根をよせた。
『僕にもっと力があればよかったのに・・・』
本当に、ごめんなさい。
そう続ける彼の声は幾分かか弱く、そして震えていた。
よくよく聞けばこう言うことだった。
親衛隊が、怒りの矛先を俺に向けているのはだいたいわかっている。
しかし、それでは少し語弊があるようだ。
会長の親衛隊はどうやら俺ではなく、陸也に怒りが向いているようで。
まぁ、俺は巻き込まれているだけだから怒られたって、どうもできませんけど、と思っていたので誤解がなくてとってもうれしいのだが。
陸也にその怒りが向いてしまっては困る。
あくまで俺は、陸也の盾だ。
陸也に何かあっては困る。
深月も思いとどまるように言っているようだが、今まで他の親衛隊より穏やかだった分、今はもう制裁まっしぐららしい。
このままでは・・・やばい。
・・・ということで。
深月が俺のところにやってきたわけだ。
自分ももちろん止めはする。
しかし、それでも阻止しきれない者がいるだろう。
だから、せめて、目を離さないであげてほしいと。
帰り際、深月はこちらをもう一度振り返り、謝った。
自分の不甲斐なさを。
その顔は弱弱しく笑っていた。
俺は、どうすることもできないから、とりあえず、大丈夫だ、なんて返した。
何が大丈夫なんだろう。
よくわからないけど。
深月が帰ったあと、一人になった俺はいつの間にか薄暗くなってきた空を見上げてため息をついた。
俺に何ができる?
せめて、手遅れにならないように。
この、危うい状況を逃れなければいけない。