小さいモノ
□小さいモノB
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「お茶がなくなりました」
「・・・え」
俺は、最近もはやあたりまえのようになってしまった、副会長と一緒にお茶、菓子などを用意するという仕事真っ最中だった。
いつものように、副会長が気分でお茶を選び、俺が淹れる。
お菓子も同様に、副会長の気分、または誰かからのリクエストにより選ばれたお菓子を副会長が盛り、俺が運ぶ。
そんないつもの流れ作業。
しかし、どうやら今日はそんな風に行かないらしくて。
「とっても困りました」
うーむ、と悩み始める副会長。
「お茶がなくなったら、いつもどうしてたんですか」
「頼んでました」
・・・まぁ、当たり前だよな。
「今日はみんなにがまんしてもらって、とりあえずお茶を頼めばいいじゃないですか」
「・・・まぁ、そうなんですけど」
「・・・?」
なぜか苦い顔をする副会長。
「なにかだめな点でもあるんですか?」
「・・・・まぁ」
さらに険しい顔をする副会長。
・・・まさか、ひとりでお茶たのめましぇーん、みたいな状況?
・・・いくら相手がお坊ちゃまでも、それはないか。
「空穂君」
俺が勝手な妄想をしていると、副会長が神妙な感じで俺の名前を呼んだ。
そして、がっしりと肩を掴まれる。
何事。
「なんでしょうか」
ずずい、と俺に顔を近づける副会長。
「君に折り入ってお願いがあります」
「・・・はぁ」
副会長が悩むようなことだから、何かすごいものなのだろうか。
そう考えると、内容を聞く前に断りたいのだが。
副会長が口を開く。
「・・・隼人・・・会長に、お茶を頼むように言ってきてほしいのです」
「・・・はぁ?」
あまりにも拍子抜けする内容に、俺の口から出たとは思えない間抜けな声が出る。
「・・・自分で行けばいいじゃないですか」
俺がそういうと、副会長はまた、苦い顔をする。
「・・・まぁ・・・そうですけど・・・・」
なんだろう。気まずいのか?
確かに仕事もせずに毎日毎日遊んでるだけだもんな。
だけど、そんな風に思える思考が残っているんだったら仕事をしてほしい。
まぁ、それは俺の関われる内容ではないけれど。
「・・・自分でお茶頼めばいいんじゃないですか」
「・・・生徒会室の備品は全て、会長が理事長に申請しにいっているんです。僕達が出したところで、会長の許可がなければ頼むことは出来ないんですよ」
そういう事実だけはしっかりしゃべれるんだな。この副会長さんは。
「お願いです・・・空穂君。これはあなたにしかお願いできないことです」
まぁ、さすがに他の人にはたのめなさそうだけど。
副会長が自分で行けばまた別の話なのだろうけど。
「・・・・わかりました」
結局は断る理由はない。
北峰先輩は自室にいるはずだ。
ここは生徒会フロアだし、道に迷うような距離に北峰先輩がいるわけでもないし、別にいいか。
そんな風に思い、俺は副会長の願いを承諾した。
「ありがとうございます」
きれいな笑顔に見送られ、俺は北峰先輩がいると思われる目的地へ向かうことになったわけである。