小さいモノ
□小さいモノA
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※親衛隊隊長視点
「枝本隊長っ!!」
後ろから誰かに呼ばれた。
僕は一緒にいた咲本様のところの隊長さんと立ち止まった。
隊長、と僕のことを呼ぶのだからきっと同じ北峰様の親衛隊に所属しているのだろう。
「なにかあったの?」
相手の様子からずいぶんと急いでることがわかった。
「北峰様が風紀委員室に行った際、倒れてしまったという情報が・・・」
「えっ?!」
最近お姿を見ていなかった。
その理由もなんとなくわかっていた。
北峰様以外の役員様たちが全く仕事をしていなくて、それを全て北峰様がやっているということを噂程度の信憑性の話だが聞いたことはある。
実際そうなのだろうと思っていた。
毎日毎日あきもせず転入生のことを追い掛け回している役員様たちを見て、正直あきれていた。
それと同時にその場にいない北峰様のことを心配に思っていた。
けど、隊長と言えど、結局は一般生徒と何にも変わらない。
北峰様がいるであろう生徒会室にも、寮の部屋にも、近づけない。
抜け駆けはいけない。
それが隊長の僕であってもだ。
むしろ隊長だからこそ、守らなければいけない。
だから、僕が出来ることといったら、隊の統率をしっかりしておくことだけ。
たまに勝手に制裁を加えようとするものがいるから、それの取り締まり。
僕にはそれしかできなかった。
だからだろうか。
北峰様が心配、というより、罪悪感を感じる。
「やっぱり転入生に制裁をするべきだよっ」
となりにいた咲本様の親衛隊隊長が言った。
「北峰様が倒れてしまわれたのも、他の役員様たちを独り占めしようとしている藍川空穂のせいだっ」
「空穂?藍川陸也のほうじゃなくて?」
どちらかというと藍川空穂より、陸也のほうが独り占めしている、という表現がふさわしいと思うのだが。
「ちがうよっ。陸也様は藍川空穂に利用されているんだ。陸也様が生徒会の皆様に近づいて、それに便乗して生徒会の役員の皆様に近づこうとしてるんだよっ」
「そ、そうなの・・・?」
「そうに決まってるでしょっ!!そうじゃなかったらあんな平凡が生徒会の皆様と一緒にいられるわけがないっ」
そういう考え方か。
だけど、実際藍川空穂はそこまで注意すべき人物ではないと思う。
なんとなくだが、藍川空穂は兄の陸也に振り回されているような印象を受ける。
むしろ、兄の方に制裁すべきでは?
「とりあえず、僕、保健室に行ってみる」
そう告げて僕は保健室へと走り出す。
もう北峰様は起きていらっしゃるだろうか。
咲本様の隊長を置いてきてしまったけど、今はそれどころではないと思った。
「藍川空穂・・・・許さない・・・・」
走り去る僕のずっと後ろのほうで、咲本様の隊長がそんなことを呟いていたとは、僕は全く知らなかった。