小さいモノ
□小さいモノA
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※空穂視点
「・・・・広いな」
最初にでてくるのはやはりこの一言。
俺は今、美形集団と一緒に生徒会室に来ている。
広く豪華なつくりの生徒会室は、一瞬とはいえ一度入っていても圧倒されるものがある。
「たしかお菓子もお茶もあったはずですから、なんでも言ってくださいね、陸也」
副会長が飛び切りの微笑みを浮かべて言った。
「おうっ」
陸也も陸也でとてもうれしそうだ。
俺は陸也に腕を引っ張られながらふっかふかなソファの上に座らされた。
「りーくやっ」
「ぎゅーってしてーっ」
さっそく双子書記が陸也にくっつき始める。
陸也もそれを咎めることなく、じゃれ始める。
いつもの光景だ。
俺はそんな3人から視線をはずし、周りを見渡す。
北峰先輩がいない。
生徒会室に入ったとき、まずそう思った。
俺はてっきり北峰先輩は、生徒会室にいるものと思っていたのだが。
そして目に付く書類の山。
前にちらりと見たときより減ったように見えるが、それでもやはり目に付く。
こんなに山になっているのに、当の役員達はそれに目もくれず、無視。
視界に入っていないんだろうか。
あんなに溜まっているのに。
恋は盲目って奴なのか。
不自然なほどに書類を無視して遊び始める役員+塚本君+陸也。
まるで書類の山が俺にしか見えていないようだ。
「りくやーん。お菓子たーべよぉ」
会計さんがへらりと笑ってお菓子の山を持ってきた。
「やったーっ」
「「いっただっきまーぁす」」
書類の山は見えなくても、お菓子の山は認識できるらしい。
「空穂も食べろよ」
陸也から毎度おなじみのお菓子のプレゼントを渡される。
その量が俺のノルマらしく、全て食べなければ陸也に文句を言われるので毎度必死だ。
俺に渡されたのはあきらかに外国産の高そうなチョコレート。それもかなりの量だった。
一つ袋から出して、口に入れると、甘ったるい味が口の中に広がった。
どろりとしたその感触。
口に残るその感触に、胸焼けがしそうだな、と思った。
・・・北峰先輩大丈夫だろうか。
俺の頭にそんな気持ちがぐるぐると渦巻いていた。