小さいモノ

□小さいモノ@
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昔から俺と伯父さんの間にはなにかしらの壁があった。

というよりも、伯父さんの方から一方的に俺を拒絶しているようにしか思えない状態なのだが。

まぁ、その状態に対して俺もなにも行動を起こさないから俺にももちろん責任はあるのかもしれないが。

そして、その代わりとでもいうように伯父さんは陸也を溺愛している。

まるで、息子のように。

そんな伯父さんの態度についても陸也は十分自覚済みなのだが、陸也のほうも拒絶しない。

陸也も陸也でおれのことをだいぶ気遣ってくれているのでそこは本当に感謝している。


だけど、どんなに陸也が気を使ってくれてもやっぱり俺と伯父さんの間の亀裂は修復できるわけじゃなくて。

・・・・というのが今の状況を作り出している。


もちろん、拒絶される理由もわかっている。

わかっているからこそ、心のどこかで傷が疼くようなそんな気持ちになる。



だけどまぁ、仕方がないのだろう。








全ては俺が悪いのだから。















「話は以上だ」

どうやらすべて話し終わったらしい。

「うー・・・なんかいっぱい説明されたけど半分ぐらいしか頭に入ってないかも・・・」

「わからないことがあれば、いくらでも私に聞きにきなさい」

陸也にやわらかい笑顔を向ける伯父さん。

「さて、陸也。理事長室の外に副会長を待たせているから、寮まで案内してもらいなさい」

「わかったけど・・・・空穂は?」

どくり。

何かが心臓で疼く。

伯父さんが俺を呼び出すときは決まっていい話をされることなんてない。

「彼には少し話があるんだ。悪いが陸也、先に寮へ向かっていてくれ」

「・・・・・・・・・わかった」

少し眉根をひそめた陸也だったがすぐにソファから立ち上がり軽く手を振って理事長室を出て行く。

その姿を最後まで本当にやわらかい微笑で見送る伯父さん。

ぱたり、と扉が閉まると、俺のほうへ視線をやり、とたんに無表情になる。

「さて、俺はお前に良い話をするためにここへ残らせたわけじゃないというのはわかっているな」

「はい」

そんな前振り、言われなくてもわかっている。

「お前にかける言葉なんてない」

俺へとまっすぐに視線をよこす伯父さん。

もちろんその目には憎悪しか映ってない。

「ただ、強いて言えば」

少しだけ顔を上げ伯父さんの視線を受け止める。

大体何を言われるかは予想が付く。

「陸也になにかあったら・・・そのときは覚悟しておけ」

「・・・・はい」

まったくの予想通り。












結局のところ、俺の存在価値というのはそれしかないのだろう。
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