小さいモノ
□小さいモノ@
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「ところで・・・」
3人で横に並び歩いていると、ふと陸也が話し始めた。
「副会長さんは、どうしてそんな笑顔張り付かせてるんだ?」
その問いに吃驚したように目を少し見開いた副会長は、本当にわからない、といった顔をしている陸也の顔をすこし見つめたあと、またすぐにその顔をさっきのように笑顔で飾る。
「よくわかりましたね」
「うん。すっげぇ違和感あるぜ。その顔」
おやおや、と笑顔で言いつつ、その目が笑っていないことに少々副会長が怖いと感じてしまった俺は悪くない。
「くせなんで気にしないでください」
また、さっきの笑顔で言う副会長。
「無理して笑うことなんてないからな。癖ならしかたねぇけど」
そういって荷物を持ち直す陸也の顔を見つめる副会長。
少々考えるような顔をする。
一体何を考えているのか。
「空穂」
半場空気になりかけていたところで、ふいに呼ばれる。
となりにいる陸也のほうを向けばほい、とカバンの中に入っていたものを投げられる。
持っていろ、ということだろう。
「さっきからそれ背中に当たって痛かったんだよな・・・」
ありがと、といいながらまた俺に持たせたものをカバンにしまう。
「ところで、陸也君と空穂君は・・・双子、ですか?」
「みりゃわかるだろ。どう見たって双子」
その答えに苦笑する副会長。
「どっちが兄なんですか」
「みりゃわかるだろ。俺だよ俺」
「見えませんね」
にこりと笑いながら言う副会長に、俺はまた、少し怖いと思ってしまった。
どうやら、笑顔のことを陸也に言われたことが癪に障ったらしい。
「空穂君もこんなおにいちゃんだったら大変でしょう」
いきなり話を振られて少し吃驚する。
「嫌だ、とは思いませんよ」
「おいおい、空穂。なんだその曖昧な返事は。お兄ちゃんのこと大好きですぐらい言えよ」
「・・・・。」
「空穂くんは正直なんですね」
初めて副会長が俺だけに笑顔を向ける。
作られた笑みだとわかっていても、きれいだなーなんて感じてしまう。
「さて、もうそろそろ校舎に着きそうです」
前方を見て、言う副会長の視線を追うと、さっきの門とは比べ物にならないくらい大きな壁・・・否、校舎が立ちはだかっているのがみえた。