小さいモノ
□小さいモノ@
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※空穂視点
「ここが理事長室です」
きれいすぎる校舎に圧倒されながらついた理事長室もまた、それはそれはすごいものだった。
扉だけど金がかかっていることがわかる。
「僕は外で待っていますので」
にこりと変わらずにきれいな微笑をむけてくる副会長。
そんな副会長に陸也がそっかそっかーとかなんとか言いながら扉を開け始める。
俺はその背中についていく。
正直このあと待ち構えているであろう人物に会うのは気乗りしない。
と、いうよりも憂鬱だ。
こんなの今に始まったことじゃないけど。
「陸也っ!!」
金かかってるなーと呟く陸也の左の奥の方から誰かの声がした。
誰か、とか言わなくても誰かはわかりきっているのだが。
声がした方へほぼ条件反射で顔がそちらへ向く。
「あ、伯父さん!!」
陸也も声を上げる。
そこにはきっちりとスーツを着こなし、誰もが大人の男、とでも言いそうな、そんな雰囲気の男、言ってみれば俺たちの親戚にあたる人藍川 聡(あいかわ さとし)がデスクのいすに座りこちらを見ていた。
こちら、といっても陸也だけなのだろうが。
「よくきたね、陸也」
座っていたいすから立つ伯父さんに、陸也が駆け寄っていく。
俺はというと、とりあえず陸也と距離を置きながらもついていく。
「伯父さん、マジ久しぶりだなっ」
「そうだね。陸也背伸びたみたいだな。また一段と美人になった」
そういって陸也を抱きしめる伯父さん。
「ぬ。なんだよ美人って。男がそんなこといわれてもあんまうれしくないんだぞ」
そう反論しながらも抱きつかれていることに抵抗しない陸也を伯父さんが優しくなでると、近くにあったソファに座るよう諭した。
「空穂もつったってないで座れよっ」
「うぁっ」
おもいっきり腕を引っ張られ、無理やりソファに座らされる。
「それじゃあ学園の説明をしようか」
伯父さんは俺のほうをちらりと一瞥しすぐに視線を逸らす。
それから、すぐに学園の説明が始まる。
話の内容は簡単に言えば学園の設備の説明とか寮、食堂の使い方とかそんな感じだった。
その間伯父さんは陸也だけを見ていた。
まるで俺なんて存在しないみたいだ、と思った。