小さいモノ
□小さいモノA
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「ついにこの時がやってきた」
そいつはそこにいる全員の顔を見渡し、不適に笑う。
「俺たちはこのときを待っていた。待ち望んでいた」
周りのみんなに語りかけるように、または自分に確かめるようにそいつは言った。
「さぁ、みんなっ!!」
カッっと目を開き、背後にあった壁、否黒板をバンっと叩く。
そして、叩かれていい音を教室中に響かせた黒板に書いてある3文字。
「体育祭だっ!!!」
うぉおぉおぉおっ!!!
全員が雄叫びのような声を出し、一斉に立ち上がった。
「さぁ、今日からみんなで特訓だ!!全員グラウンドへ出ろっ!!!!」
おぉぉぉぉおおぉおぉおぉおっ!!!!!!
・・・・とはならず。
ちなみに、「体育祭だっ!!!」までしか我がクラス1−Sでは実現しなかった。
「おい、みんなどうしたっ。体育祭だぞ体育祭。血がみなぎってくるだろ!!」
・・・とさっきから熱弁を振るうのは我がクラスの体育委員。
ちなみにクラスの委員長は欠席、立川先生は・・・寝ている。
「いいからー早く種目決めちまおうぜー」
季節は梅雨もあけ、暑い季節がせまっていることもあり、暑さのせいで生徒たちは少々だるそうに体育委員の話を聞いていた。
俺、藍川 空穂(あいかわ あきほ)もその生徒たちのひとりで、窓側のこともあり、日差しが少しまぶしかった。
「気合入ってるな・・・」
となりで苦笑いしながら言うのは沼田 創(ぬまた つくる)。俺のルームメイトだ。
「なーなー空穂ー種目何にする?」
俺の目の前の席に座っている、俺の双子の兄である陸也(りくや)がこちらに話しかけてきた。
「なにやっても変わらないから、あまったのでいいかも」
別に余裕ぶっこいて言った発言ではなく、運動はあまり得意じゃないからこその発言である。
「そっかー・・・俺マジ何にしよう」
うーんと悩み始める陸也。
「沼田君は何にするの」
「ん、俺ー?俺はとりあえず走りたい」
ニカっとさわやかに笑った。
さすがクラス一の爽やか君だ。
「とりあえず自分の出たい種目のとこ名前書いていけーっ!」
体育委員が種目を黒板に書き、周りも自分の名前を書きに行く。
俺は少し人が引いてきたのを見計らって前へ行く。
「空穂ー何にするんだー」
陸也が後ろからのしかかってきた。
「んー・・・」
「人気ないのはー障害物競走と、パン食い競争だな」
どちらも走るのか。
「じゃあ俺障害物競走にするから、空穂パン食い競争にしろ。でもってパン取ったら俺によこせ」
「・・・・・わかった」
自分でパン食い競争に出ればいいのに。
全員が名前を書き終わり、種目が決まった。
俺はパン食い競争。
・・・パン取れるかな。