小さいモノ
□小さいモノ@
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「でかいな」
「うん・・・・」
立ちはだかる壁。
否・・・・校門・・・?
俺、藍川 空穂(あいかわ あきほ)はとなりに立っている俺の双子の兄陸也(りくや)と校門を見上げていた。
恐ろしいほどに大きい門。
明らかに金がかかっている。
「どうすればいいんだろう・・・・」
大きすぎる門を見上げ続けて首が痛くなってきたので辺りを見回す。
「あ、これ・・・押していいのかな?」
玄関先でよく目にするインターホンらしきものを発見する。
「あ、空穂ナイスっ」
陸也がとなりから手を伸ばしてボタンをポチっと押す。
ぴんぽーん
庶民的な音が響き渡る。
・・・・。
『はい、どちらさまですか?』
インターホンからだれかの声が聞こえた。
「あ、今日転校してきた藍川陸也と空穂ですけどー」
『あーはいはい。今迎えがそっちに向かってると思うんで、少々お待ちください』
「わかりましたー」
ぷちり、と音がして会話が終わる。
「少々って・・・どれくらいなんだ・・・」
「・・・・さぁ」
ここまでの道のりが長かったこともあり、早く寮の中に入ってくつろぎたい気分だ。
ここ、藍桐学園(あおぎりがくえん)は山奥にある全寮制男子校。
あまり説明は受けていないが、どこかの財閥のお坊ちゃんとかお金持ちが通っているらしく、校舎も立派で設備も充実しているとか。
それ以外にも他の学校とは異なる特色がとにかく強いらしく、少々なじめるのか心配だ。
「あ、誰かきたぞ」
陸也が声を上げる。
少しするとがらがら、と音がして門が開いた。
「こんにちわ」
門の奥から出てきたのはとても美形な男の人だった。
黒髪黒目だが、地味、という印象は受けず、和風美人、といった感じだ。
「・・・げ」
陸也が変な反応をした。
「・・・あいつ・・・starryの幹部だ」
ぼそり、と俺にしか聞こえない声で陸也が呟いた。
そういえば見たことあるような気もしないでもない。
たしか・・・・starryの幹部の水蘭・・・だったか。
「僕は生徒会副会長の咲本 久蘭(さきもと ぐらん)です。今日はお二人の案内役としてきたのでわからないことがあれば何でも聞いてください」
にこり、と微笑む副会長。
とてもきれいな微笑みだ。
完璧すぎる。
「俺は藍川陸也。こっちが空穂。よろしくな」
にか、と笑う陸也。
「はい、よろしく。ではさっそく行きましょうか」
そういって門の奥に広がる森の方へ向き直る副会長。
俺たちはその背中についていくことにした。