中編、歌詞パロ

□紅一葉 第五話
1ページ/1ページ

 □紅一葉 第五話



「 ……俺は、 」


何処か重そうに、辛そうに、悲しそうな顔でゆっくりと言葉を告げる蘭を私は黙って見ている他なかった。



葉 



「 ……今、サッカーを管理していると言うフィフスセクター、て知ってるか? 」

『 え? え、ええ。イシドなんとかって言う人が管理しているのでしょう? 』


それが何が関係あるのか、と首を傾げると蘭は気まずそうに視線をあちこちに向けた後、私の目を見て告げた。


「 ……フィフスセクターって言うのはサッカーを管理しているだけでなく、試合等での勝敗指示、更に両チームの得点まで決めている。 」

『 ! ……そん、な、…! 』


そんなの今の今まで知らなかった。…勝敗指示なんて…ッ、ただの八百長と変わらないじゃないかッ…!、しかし、そんな勝敗指示と私から離れるとは何処にも繋がりなんてない。私は益々意味が分からなくなった。


「 香苗に…、香苗だけには嫌われたくなかった。 」

『 、え? 』

「 香苗の前では真面目にサッカーをしている俺で居たかったんだ。でも此所最近、負け試合が増えてきたから手を抜いてる試合ばっかだから…、そんな俺を見たら香苗は俺のこと嫌うんじゃないかって、 」

『 ……蘭、 』

「 でも今年、新入生兼新入部員が“サッカーに革命を起こす”って言ってフィフスセクターに逆らうことになって…俺も、漸くフィフスセクターに逆らう決意が出来たんだ、だから負け試合でも勝ち試合でも、勝敗を指示されようと俺は真面目に全力でサッカーと向き合う、! 」

『 ………、 』

「 もう手を抜いた試合なんかしない、だから…、 」


俺を、嫌わないでくれ――と蘭は言った。私は呆れてしまった、“そんな事”だったなんて。私がちゃんと蘭の話を聴いていれば、蘭が私に話してくれていれば。結局は二人の勘違いのせいですれ違ってしまったんだ。
私は溜め息を飲み込み、口を開いた。


『 蘭、 』

「 ……何だ? 」

『 ……お帰りっ! 』


そう言って私は蘭に抱き着いた。蘭は少しよろけ、尻餅を着きそうになるのを堪えて私を抱き止めて笑みを浮かべながらこう告げた。


「 ただいま、 」


今夜私達の秘密の場所で紅葉の雨を見ながら手を繋ぎ、肩を並べて寄り添いながら蘭との思い出を世界に埋め、蘭へのこの愛を永久に捧げようか。


『 蘭、私、蘭のことが昔からずっと好きだったの。……恋愛感情の方で、 』

「 ……俺も好きだ。恋愛感情の方で、な。 」


蘭の肩越しに見えるこの紅く美しい“桜紅葉”に永久に蘭の傍に居ると誓おうか。そして今までの悲しみが空に消えるまで、風舞うこの夜をも紅へと変えるこの紅い場所で手を繋ぎ肩を並べて寄り添い合い笑い合いながら――互いを分かり合おうか。



  紅
      ( 風に揺られ、 )
     ( ひらり舞い散れ )





      11.09.11.三輪連騾

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ