中編、歌詞パロ

□紅一葉 第四話
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 □紅一葉 第四話



 不意に土をジャリッと踏む音がして、カサッと紅葉を踏む音がして、私の居る辺りが少し暗くなって、人影が出来て、振り向くと。




葉 




『 う、あ…え? 』


私はこれでもか、と言うぐらい目をかっ開いた。だって、私の目の前には昔“距離をおこう”と行った張本人が、


『 ら、ん…? 』


いる。私は突然のあまり、吃驚してしまったせいで上手く言葉を紡げず、『……ぁ、』としか出ない。そんな私に蘭は辛そうな苦々しい表情に少し苦笑を付け加え私に近寄ってくる。


『 っ、 』


蘭が段々私に近寄ってくる。そんな蘭とは裏腹に私は恐くなって体を震わせた。……“今更何の用?”とか、“帰って”とか蘭を否定するような言葉しか出ないような気がして、蘭に今度こそ嫌い、と言われそうで。そんなことを考えているうちに段々蘭は私と距離を縮めている。


「 、香苗 」

『 う、ぁ…っ、 』

「 ………香苗、? 」


ガタガタと震える私に心配したような顔で蘭は近寄ってくる。
嗚呼、嫌だ来ないで嫌だ恐い怖いこわいコワイ恐い!


『 や、だやだやだやだ来ないで近寄らな「 っ、香苗! 」っ、! ふ、ぅ…う、ぁ… 』

「 ……泣かせないって、約束したのにな、 」


ごめん、と呟いてぎゅうっと私を力強く抱き締めた。私は混乱のせいで只々されるがままだった―――…蘭が私に謝っているのか自分に謝っているのかは私には分からなかった。


『 ねえ、蘭、 』

「 ………ん、? 」

『 蘭は今更、私に何をしに来たの?何をしに此所へ来たの?本当は私のこと嫌いだったんじゃないの? 』

「 ……何、言って、 」


私でも自分が何を言いたいのか分からなかったけれど、今は私の中でふつふつと込み上げる何かに身を委ねたかった。


『 ……本当は私のこと、消えてほしいって思「 違うっ! 」何が違うって言う…っ、! 』


さっきよりも強い力で抱き締められて、蘭の温もりに触れた。その温もりだけは昔の暖かさと変わっていなくて、少し頭を冷静にすることができた。


「 ……俺は、 」




  淡




      11.09.12.三輪連騾

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