中編、歌詞パロ
□紅一葉 第三話
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□紅一葉 第三話
どさり、散った紅葉の上に寝転がる。不意に仰向けになる。
『 ……冷た、 』
ひんやりとした夏に味わいたい感触が背中に触れ思わず起き上がり背中を手で擦る。こう言う時、蘭は笑って「大丈夫か?」と言って手を差し伸べてくれるのだろうか、そう思わず考えた私を殴りたくなった。こんなネガティブなことを考えるから余計に辛くなるのに。
『 ……あ、 』
髪を結っていたゴムが――まあリボンなのだが――緩んでいることに気付いた。慌ててリボンを解き、そのまま結い直さずリボンをぼうっと食い入るように眺めていた。
『 ずっとこれで結ってるけれど千切れたりしないかしら、 』
つうッとリボンの先から先までをなぞる。…このリボンだけは無くしたくない、このリボンは私の宝物…、何を代償にしても譲れない、蘭“との”想い出。
『 ー…蘭が腕を怪我した時、私が結ってたこのリボンを腕の怪我したところに巻いたんだ。 』
そう言えば怪我した蘭じゃなくて私が泣きじゃくっていた。そんな私を蘭は慌てたような様子で私を慰めようと頭を撫でてくれてたのだ、泣き止むまでずっと。暫くしてから泣き止んで、沈黙が訪れた。その沈黙を破ったのは蘭ではなく私。
『 ……らんなんてきらい、 』
「 え 」
『 しんぱいする人がいるのに、どうして笑ってられるの 』
「 ごめん、 」
『 …っ……なんでらんがあやまるのお…わたしは、らんがケガするとこ見たくなくてっ、言ってるのにっ…なん、…! 』
そんな風にしょうもないことでまた泣いて蘭を困らせたから、嫌われると思ってた。けれど蘭は私を抱き締めた、当然昔の私は驚いただろう。暫く抱き合って蘭が不意に呟いたんだ。
「 じゃあおれが香苗を泣かせないようにする、だから… 」
泣かないでくれ、と蘭は泣きそうな声で言ったのを今でも覚えている。あの頃の私は頷く他なかった、…あまりにも蘭が儚くて今にも消えそうだったから。
『 けど、 』
言い出しっぺの蘭が私の前から消えるとか、…あの頃の私も蘭も、思っていなかっただろう。いや、もしかしたら蘭はあの頃から私の前から離れたいと思っていたのだろうか。…私は、蘭に騙されていた?ううん、本当は分かり合えるとか言って蘭に嫌いだ、と言われるのが怖くて分かり合えた振りをしていたんだ。……だとしたら私、私私。
『 凄く、最低…だっ、 』
ポタポタと溢れてくる涙に気付かない振りをして体育座りをする。私、結局蘭がいないと何も出来ないじゃないか、…――と刹那。
私の前に、人影が出来た。
想ひ出は
白きリボンに
託す
11.09.11.三輪連騾