中編、歌詞パロ

□紅一葉 第一話
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 □紅一葉 第一話




ふわり、と風が吹いた。それにつられ沢山の紅葉が風に誘われ舞い散る。


『 …蘭、 』


名前を呼んでも君は居ない――私の前に帰ってこない――なんて無様なのだろう。去年まではこの紅葉が咲き誇る私達の秘密の場所で背中合わせをして紅葉を見上げてたり君の肩にひらりと乗った一枚の紅葉を取って笑ったりしていたのに君は、…もう居ない、なんて。私は、君の何を知っていたのだろうか。


『 ……蘭、私は、 』


私は背中を合わせれば、肩を並べれば、一緒に歩けば、寄り添えば。


『 蘭と、分かり会えると思っていたの。 』


けど、それは――私の思い違いで勘違いだった。蘭は私と居て楽しかったのだろうか、辛くなかったのだろうか、蘭は、蘭は蘭は蘭は蘭は。


『 ―――私のこと、嫌いだったの? 』


あわよくば、「そんなことない」と返事をしてくれたら良いのに。そんなの無理だと分かっているのに、


『 蘭、 』


返事が欲しいと思う私は欲張りで我儘で最低で、愚かなのだろうか。私は昔からずっと一緒だった蘭のことが好きだった――否、好き。だから蘭の全てを知っているつもりでいた、…本当に“つもりでいた”んだ。だから蘭の辛さを分かろうともしなかったんだ、何が分かり合えるんだ。


『 ごめん、なさい。 』


今更謝ったって何があるんだって怒られても構わない。私は本当に蘭が好きなんだ、この気持ちに変わりはない、変わりはしない。


『 、知ってる? 』


無くしたら大切なモノだと分かるのが沢山ある、と――私に向けて言ったのか君に向けて言ったのか私にも分からない言葉を不意に呟く、紅葉の木はそんな“私”を嘲笑うようにザワザワと紅葉を雨のように降らした。
 



 
 消えるだけ







      11.09.10.三輪連騾

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