novel(short : nagi)

□怪鳥の島
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「トワ君、レモネードを作ったから一緒に飲みましょう」

「はい、頂きます!」

丁度、倉庫整理を終え、上がってきたトワは食堂の椅子に腰掛けた。

「わぁ、冷たい飲み物なんて嬉しいなぁ」

「ここは気温が高いし、トワ君は倉庫整理で力仕事の後だから、喉が渇いたでしょう」

「ええ、とっても」

トワは、目の前に置かれたグラスを口に運ぶと一気に喉に流し込んだ。

「…あー、生き返りました」

「よかったわ」

「今頃、皆さんは怪鳥の巣に近づいたでしょうか…」

現在、シリウス団の他のメンバーは、目の前に聳える断崖絶壁の怪鳥が生息している島へと向かっていた。

食堂の窓から皆が向かった島を見つめて目を細めたトワの横顔を、七緒は向かい側の席で肘をつき見守りながら昨夜の出来事を思い返した。



昨夜、リュウガ船長の召集で今回向かうメンバーが言い渡された。

島には上陸し易い砂浜などなく、切り立った崖を登らなければならなく、妊娠中の七緒は当然、留守番であることは承知であったが、リュウガは、その他にトワにも残るように命じたのだ。

理由は、海流の変わりやすい付近に船を停留させているので、念の為ということではあったが、怪鳥を相手にするという今回のお宝探しは、危険が未知数であるのだ。

七緒を一人残しておくのが心配であるという事が大きいと、皆の中では明白であった。

「…僕は船に残るんですね」

「ああ、留守中の船をしっかり守ってくれよ」

リュウガの力を込めた眼差しが向けられると、僅かの間、床に目を落としていたトワが、顔を上げた。

「分かりました。任せて下さい。船も七緒さんのこともしっかり守ります!」

「…頼んだぞ」

力強く応えたトワに、リュウガの口端がフッと上がり、ナギも自分の妻を頼んだぞという眼差しでトワを見返した。




昨夜、留守番と命じられた時、一瞬だか落ち込んだ表情を見せたトワを七緒は気にかけていた。

『七緒さん、怪鳥ってどのくらい大きいんでしょうね!僕ね、今回とても楽しみなんですよ』

『楽しみなのっ?怖くないの?人を襲うらしいと聞いたわよ…』

『まさに冒険!という気がしてワクワクしてくるんです。それに、怪鳥と言っても鳥なわけですから、仲良くなれるかもしれないでしょう』

いかにも動物が好きなトワらしい発言だった。

甲板で掃除をしている時の他愛もない会話をした七緒はトワの思いを知っている。



「本当はトワ君も島に上陸したかったのよね」

自分が心配されていることに気づいたトワが即座に否定した。

「いえ…僕には僕の役割があります。皆さんのようになるにはまだもう少し修行が必要なんだと思います」

「トワ君…偉いなぁ」

「え、偉くなんかないですよ」

照れて視線を外したトワが、窓の外を見てあっと驚いた顔をした。

「七緒さん、見て下さいっ、何かが溺れています!」

海面でバシャバシャと水しぶきをたて何かが、もがいていた。

トワは急いで甲板から海に飛び込んだ。七緒もその後を目掛けてロープのついた浮き輪を投げ込んだ。

トワが助けたモノは、鳥のような生き物だった。





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