novel(short : nagi)

□指
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抱きかかえる大きな掌の骨太の力強い感触は、幾度とない危険な場面をくぐり抜けてきたしるし。

白い肌に触れてくる長い指は、まるで薄い硝子細工を扱うように、繊細な動きをみせる。


七緒は、いつしか交互に押し寄せてくる逞しくもありしなやかである、その波の虜になっていた。

ベッドの中で抱き合うように眠りについた二人。

さざ波の中で、未だ消えやらぬ重ねた愛の余韻。

ナギの指は、いま一度、七緒の熱を求めて、肌に微かに浮き出る背骨の辺りをツーッとゆっくり滑り上ってくる。

すると、静かに寝息をたて始めていた七緒が、ナギの腕の中で身体をピクピクと揺らした。

「フフッ…ナギったら止めて…くすぐったいわ」

クスクスと笑い出した七緒の長い睫毛が微かに震えている。

それでも、閉じられたままの瞼に、ナギはそっとくちづけ「開けろよ」とノックする。

七緒は、今まで何度となく肌に落とされてきたナギの唇の弾力が好きだ。

ぱちりと目を開けた七緒の瞳に、ずっと彼女を見守っている温かなナギが映っている。

「…眠らないの?」

「…眠れねーんだ」

愛する女性が自分のものになり、肌を重ね合い、こうして腕の中に収めているというのに…

身体が求めて求めて眠れないと、熱を帯びた瞳が七緒を犯し、彼女は、いまし方、愛する人に熱された身体がふたたび蘇るのだ。

「…もう眠りなさい」

「…じゃあ眠らせろ」

身体が火照り出すのを覚られまいと、軽く叱るように告げた七緒を、ナギは強く抱き寄せた。

額に頬に鼻に顎に、首を竦める七緒に構わず、ナギのキスが降ってくる。

「ナギ…だって、さっきまで…」

先程まであんなに愛し合ったじゃない…

言葉は恥じらいから繋がらない。

「…足りねーよ…お前をもっと欲しい…」

七緒の耳元を唇で優しく噛みながら囁く。
それは、彼女の弱点を知るナギのずるい手。

ゾクゾクと腰から背中を這い上がるような感覚と瞬時に力が抜けていく現象…

ナギの鍛えられた広い胸にあたる、柔らかな二つの膨らみの先はキュッと固くなり、ナギの肌に新たな悦びを与えてくるのだ。

堪らない感触に、ナギの愛撫はもはや悪戯ではなくなり、項を指で撫でながら、ゆっくりと舌を口内に埋めてくるのだ。

「…んっ……」

ナギの指は滑らかに肌をなぞり、深いキスを続けたまま、七緒の柔らかな膨らみを掌の内におさめ形を変形させ、七緒の変化を楽しむ。

「…ん…ナギ…ずる…い…」

「…何がだ…」

ナギは七緒の鎖骨に吸いつきながら、言葉が意味することを知りつつ尋ねる。

「…ん…っ…私も…眠れなく…なっちゃう…」

ナギは顔を上げて、七緒にフッと笑いかけた。

「…心配すんな、夢心地にさせてやる」



ナギの長い指が好きだ。

毎日とびきり美味しい料理を作るナギの魔法の手は、七緒を愛する時もその器用さは発揮される。

長い髪を優しく梳いてくれる指。

頬を愛しく撫でる指。

ぽってりした唇をすっとなぞる指。

柔らかな乳房を包む掌が先端の蕾を指の間に挟んだり、そっと摘む時。

腰のくびれをなぞり、閉じられた脚の間に滑るように隠れてゆく指。

七緒自身も知りえぬ場所の好みを知り尽くし、融けさせる指。


七緒は、何度も、ナギの指を求めて、その指に雲の遥か上まで導かれてゆくのだ…








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