novel(short : nagi)
□babysitter
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七緒の部屋は、多少荒らされた跡があるものの、盗られたものは何もなく…というより盗られて困るものは殆どないのでその点は問題はなかったが、問題は、七緒が鍵を掛け忘れた事が原因で泥棒に入られたという点であった。
「お前は馬鹿かっ。泥棒に入られても仕方ないだろうっ」
シンに酷く叱られ、七緒は益々、泣きじゃくり、そして今は、泣き疲れて何時の間にかベッドで眠ってしまっていた。
時々、泣いた後遺症からヒックと寝息が引きつる度に、ベッドの端で添い寝をしていたシンを苦笑させるのだった。
厳しく叱ったのは、不注意で命を危険にさらしたからである。
もし自分が部屋に戻っていなかったら七緒は今頃どうなっていたであろうか。
怯える彼女を一人残し、部屋に戻ることが躊躇われたシンは、彼女が眠りについた今でも、離れることが出来ずにこうして見守っていた。
「…本当に手の掛かる奴だな…」
『あいつは本当に危なっかしいんだ…』
ナギの言葉が蘇る。
睫毛に光る涙のなごりをそっと親指で払い、その指で、今度はふっくらと柔らかそうな唇をなぞった。
「…礼のひとつくらい要求しても文句はないだろう」
シンが顔を近づけると、七緒は僅かに小さな動きを見せ、「…ナギ」とポツリと寝言を呟いた。
「…コノヤロー」
気をそぎやがって…
クッ…としかめた笑みを浮かべ、シンはやりきれない息を洩らした。
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