novel(short : nagi)

□満天の星に願いを込めて
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嵐で予定が狂い、本当なら今頃、目的の町に着いていたはずなのに、シリウス号はまだ大海原の真ん中にいた。

年明けカウントダウンを町の真ん中で、酒をかけ合い祝いたかった船長は、すっかり機嫌を損ねていたが、ナギが美味しい酒をいつものような制限もなく沢山出してきたので、機嫌は途端に治ってしまった。

いま、甲板には横たわるぐでんぐでんのシリウスの面々。

私は、ナギに「腹の子の為にくれぐれも飲むんじゃねーぞ」と止められていたので、絶対お酒は口にしなかった。

そのお陰で、頭も眼も冴えまくりだ。

夜も更けて一段と冷たい風が甲板を駆け抜けていく。

ぶるっと身体が震えた直後、ふわりと肩に毛布をかけられた。

「あ…」

振り返るより先に背中から包み込むように抱きしめてきたのはナギだ。

「…今からが今夜のメインイベントなのに身体冷えたらマズいからな」

「…メインイベント?」
「ああ…ちょうど年が明ける頃、流星群が見えるんだ」

「本当?じゃあ皆を起こさないと…」

「いいんだ。あいつらにとっては別に珍しいもんじゃねーし、せっかくのムードが台無しになっちまうだろ」

ナギがニヤリと笑った時、私はようやく気がついた。

「もしかしたらナギ!皆にお酒を沢山飲ませたのは態とだったのね」

包まれたままの私が首だけ振り返り軽く睨むと、フッと笑い返した。

「うぅっ、さっみぃ…」

そして、ナギは誤魔化す為なのか、或いはタイミングよく寒さで震えたのか、私の首筋に顔を埋め更にキツく抱きしめた。

背中に伝わるナギの温もりが、どんな時も私を安心させてくれる。

「…ナギ大好き…」

風に流された微かな呟きが届いたのか、ナギは私の耳に口づけた。

ぞくりと強張ったのは寒いからではなく、ナギの熱に感じたからだ。

「始まったぞ…」

ナギと共に満天の夜空を仰いだ。

ひとつ……ふたつ……

最初は数えていた流れ星は、その内、数えられなくなってしまった。

何故なら…

「…一緒に願い事をするぞ」

そう言ったナギがそのまま私に口づけてきたからである。


お星さま…
どうかナギと私に授かった新しい命をお守りください。
そして…
新年もシリウス号に幸あれ!





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