shanks

□壊れるぐらい愛して
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好きなら、もっと激しく愛してよ。
躊躇なんてしなくていいわ。

熱く、激しく、愛してほしいの。



「…ムカつく。」

今宵も相変わらず宴をする、彼ら。
古ぼけた酒屋には、彼らの陽気な声が響く。

あたしは、その光景を見ながら、無意識に呟いてた。


「…何が、だ?」

隣で酒を煽ってたベンが、あたしの顔を覗き込む。


あたしの視線の先には、綺麗な女の人と戯れるエロ親父の姿があった。


酒に酔ってるのか、あたしの殺気めいた視線に気付いてない。


そんなあたしの視線の先を追いかけ、標的に辿り着いたベンは、呆れたようにフッと笑った。



「相変わらずだな、お頭も。」


いつもの事だ、気にするな。


そう言うベンの言葉は、あたしの耳をスルリと通りすぎていく。



…そう、いつもの事だ。
もう、あたしだって慣れたんだ。



「…分かってる。」


そう呟いてたみたけれど、声は弱々しい。
強がってることが、バレバレだった。


ふう、というベンの溜め息。
ナマエ、
と、ベンが名を呼んだ。


「何よ。」

視線を外さないまま答える。

慰めの言葉なんて、聞きたくなかった。



「お頭は、あれでも結構我慢してんだ。お前のことでな。分かってやってくれ。」


ぽんぽんと、あやすような撫で方。


それと同時に歪む視界。


「…好きなら、」

「ん?」



「…好きならっ、壊れるくらい愛してよっ…!」

涙が溢れるより前に、椅子から降りた。


もういい、聞きたくない。
事実だろうが、嘘だろうが、


もう、何も聞きたくない。



「おいっ、ナマエっ!」


ベンの声が聞こえる。
それでもあたしは、酒屋を飛び出た。





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