zoro
□あなたという小説
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ナマエは、アクアリウムバーにいた。
この間、ログを貯めるために立ち寄った島で買った小説を読んでいたのだ。
水槽の機械音と、ページをめくる音。
それだけしか響かない部屋だから、読むことに没頭できる。
ナマエは、黙々と字を追っていた。
―――
戦争によって引き裂かれた恋人たち。
「必ず帰ってくるから。」
そう言って、真っ赤に染まる空へと旅立った少年。
少女は、最後に少年が残してくれた唇の温もりと、言葉を信じて待ち続ける…
けれど、少年は炎と共に空に散ってしまった。
それでも少女は、待ち続ける。
あの約束が、果たされないと知っていても…
―――
気づけば、文字は歪んでいて。
自分が、泣いているのだと思った。
これが、小説の中の話だとしても。
自分の身にも、起こるかもしれない。
だって、私たちは、常に何かに追われてるから…
その時。
――ボフッ
自分が座っていたソファが微かに上下した。
驚いて、小説から顔を上げる。
そして、隣を見ると、今まさに考えていた人の姿があった。
「ゾロ…」