FF15

□存在理由
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「ソムヌス様!!」



うっすらと目を開けたソムヌスに気づいたのはギルガメッシュだった。
その声に視線だけ動かす。

そこは王の間ではなかった。


状況を確認しようと視線だけを動かしている間にもギルガメッシュが何かを言っていたのだが、よく聞こえたのは最初の大声だけで、あとは聴覚がこもってほとんどききとれない。
そうしてる間にもギルガメッシュはどこかへと行ってしまった。


ヒカリは?


そう聞きたかったのに声も出ない。
全身の魂が抜けた様に感じる。

考えを巡らせるも段々と疲れてきて、頭も瞼も重くなってきた。
しかし、眠りたくないと不安が駆け上がってくる。


このまま死ぬのか、またはあの剣神を名乗る者に取り込まれるのか…。そのまま瞼を閉じた瞬間だった。



「ソムヌス様」



その声がした瞬間にそれまで重かった身体中が一気に浄化された。


そして、自分の左手を握る細い指の感覚。



「ヒカリ……」



ソムヌスの目から熱い涙が零れる。
それを隠そうとして右腕をあげるが、不意に触れる中指の硬い感触に現実を突きつけられた。



「ソムヌス様、指輪を受け取られたのですね」



その言葉に思わず彼女を見た。
ヒカリの表情は今まで見た事のない毅然とした物だった。



「…俺は……恐ろしい事をしたのかもしれない……結局、何も出来なかった。王の器では無かった…」


上体を起こしてベッドから出ようとするが、ヒカリにそれを止められる。



「まだ休息が必要です」



「いや、後片付けを早急にしなければならない。あのままでは……」



王の間でまたいつシガイが暴れるかも分からない。そして、神凪の亡骸も葬ってやらねばと考えた。


しかし、ヒカリの次の言葉でソムヌスは驚愕の事実を知った。



「エイラ様の亡骸は私が丁重に埋葬致しました。そして、アーデン様の事ですが……」




───────
──────
────五日前



「おや、なんだか…騒がしいですねぇ」



朝焼けをぼうっと部屋の窓から見ていたマテル。扉越しではあるが、部屋の外が何やら騒がしい。


「大変だ…ヒカリ様の様子がっ…」


ふとヒカリの方を見ると、眉を顰めてうなされ、冷や汗が滲み出ている。
大慌てで飲み水へ布を浸して絞ると汗をふこうとベッドへ駆け寄った時だった。


「ヒカリ様!!お気付きになられたんですか!!」


ヒカリの瞼がうっすらと開き、マテルの声に視線を移した。


それまで寝たきりだった人とは思えない程に咄嗟に起き上がったヒカリを慌てて引き留めようとしたマテルだったが、掴まれたその腕のしっかりとした力に思わずヒカリを見た。



「今すぐ、王の間へ!!マテル、あなたは神凪の一族へ…今手紙を…」



マテルはわけも分からず、インクを零しながらも紙も用意してヒカリの指示通りに動いた。

ヒカリはふらつきながらも裸足で王の間へと駆け出して行った。



なんとか王の間に辿り着き、開かれたままの扉へと入る。


クリスタルは輝いているが、王の間は血に濡れていて不気味さを醸し出していた。


「ヒカリ様!?意識が戻られたのですか!!」



「お二人とも…無事だったのですね」



2人の安否を確認する。
どうやらソムヌスは仮死状態に陥っているようだったが、その右手の指輪の禍々しい光が危険な状態ではないとの証拠だった。

ヒカリは近くに転がっていたエイラの亡骸を仰向けにして手を組ませた。
涙を堪えて、次の目的へと目を向ける。



「……アーデン様……」



クリスタルと光耀の指輪の力で、シガイ化が解け始めたアーデンの身体は蒼白い光に包まれていた。



「なんという事だ…」



その声に出入り口へと視線を向けた。
そこにはヒカリの出した手紙を受け取ったフルーレの使者がこの有様に立ち尽くしていた。



「神凪エイラは使命を全うしました。闇の穢れを纏いしアーデン・ルシス・チェラムは王の資格を剥奪され、ルシス王国初代王はソムヌス・ルシス・チェラムへ」



今まで聞いたことの無いヒカリの毅然とした態度にギルガメッシュは魅入ってしまう。


ヒカリの言葉にフルーレの者は膝まづき、ソムヌスの方へと頭を垂れた。



「次の神凪には直接神託が降り、それまでの代行を私が務めます。まずは、クリスタルと王の力が効いている間に、眷属を神影島へ封印します」


「なんという事だ…しかし、神影島に行く手段が有りません!!あそこは我々が生まれるより古代の神の時代から近付けぬ場所ですぞ!!」



フルーレの者の言う話しをギルガメッシュも聞いたことがある。
ガーディナから見える孤島。そこは神凪一族の崇める神の島、聖域だ。
渡ろうと好奇心に駆られるものはその手前で神の怒りに触れ帰還する者はいないという。
その嵐の影響でその海域を通る海からの貿易は難しくガーディナは賊の巣窟と言われるまでに廃れていった。


そんな危険な場所に化け物と化した人間を移送さするなど、ヒカリを知らない者でさえ叱り引き留めるだろう。



「これも神々の啓示です」


ただ凛としたヒカリの言葉に、フルーレの使者は意を決したように頷いた。



そこから三日後にはヒカリが帰還する。
そして、エイラの埋葬も一通り終えた。

不思議なことに中庭に咲いていたジールの花は全て、その死を痛むように白い花は朱に染まりそれら全てを纏めて葬った。


───────
────


「うっ……」



兄と神凪の話を聞き、自分の見た啓示を思い出しソムヌスは嘔吐した。


酷な事をさせてしまったと罪悪感に苛まれる。


「ソムヌス様…」


ヒカリはソムヌスの背中をさすった。
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