バテン・カイトス

□時
1ページ/4ページ



「……お父さま!!」



「──ミリィ、行こう。」



真っ暗になった視界には何も映らない。
ただ、最後に見たのは君によく似ている娘の泣き顔だった。


私は君を幸せにできたのか。
娘は幸せだったのか。



ダイモン、お前は私をどう思う?










『あなた…ねぇ、───────バアルハイト!」


「…!?」


「もう!寝坊助!早く支度して行かないと、アヌエヌエへ会合に間に合わないわよ?」


時計は5時を指していた。
外は薄暗い…というよりは薄明るい。


状況が呑み込めないバアルハイトに、お腹の大きい妻ヒカリが彼の額に触れた。


「…どうしたのよ、ぼーっとして。」


「いや、…会合は今日の17時からなんだが…」


「え?…あ、…まだ朝の4時30分?やだ、またやっちゃった!」

あははと笑う彼女。
初めて出会った時と変わらず、抜けているというか…


「…ふぅ。ごめんなさいバアルハイト。じゃあもう少し横にならせて…なんか、お腹が痛くて…」


最初は目立たなかったお腹は、もうすぐで生まれる我が子が育っているのがよくわかった。


そんな彼女がゆっくりとベッドに倒れたが、次の瞬間触れたシーツに異変があるのに気づいたのはバアルハイトだった。


「ヒカリ、待っていなさい!…医者を…!医者を呼んでくる!!」


破水だ。


「きゃー!!破水!!私!ど、どうしよう!!…あ、安静に!安静よ!!」



その数時間後、私と彼女の形ある絆が産声をあげた。



_
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ