FF15
□私と貴方と
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「待って!ルティヤ!!ん、わっ!?」
ヒカリは建物を出るとルティヤを呼び止めた。
すると急に立ち止まる彼の背に思い切り顔面をぶつけ危うく後ろへ倒れそうになったがルティヤの腕が伸びてきて支えてもらえた。
「えっと、その、ありがとう。ペンダントを返さないと・・・」
「それは貴女に差し上げる。元へ戻したに過ぎない」
ルティヤの言葉はいつもよく分からないと思いながらもとりあえず礼を重ねるヒカリ。
「そんな事より、そばに居てやらなくて良いのか??」
「では、後ほど改めてソムヌス様にお話しをしますね。本当に、ありがとう。貴方に助けられてばかりね」
ヒカリはソムヌスの元へと引き返した。
────ソムヌスの居る部屋
走って戻るとちょうど医師と共にギルガメッシュが部屋から出てくる所だった。
「ギルガメッシュ、もう大丈夫??」
「はい。ただ長い眠りから目覚めたばかりで若干力が入らぬ様です。滞在はもう少しかかるかと」
「分かりました。ありがとうギルガメッシュ。先生も」
2人へ礼を言うと部屋へ入っていった。
「ソムヌス様」
「ヒカリ…」
ヒカリはソムヌスの胸へと飛び込む。
病み上がりの彼はそれで少しむせ返ったが、しっかりと大きな腕で自分を包み込んでくれた。
「…守ってやれなくてすまなかった。目覚めた時、ヒカリがこの世に居ないとすら思った事も…!!」
ソムヌスは自分の目の端から流れ落ちる熱い雫を拭う事も忘れた。
「ソムヌス様、お髭が痛いです…。」
ヒカリは額にあたるチクチクとした刺激に思わず笑ってしまった。
長い間寝たきりだったのだ。無精髭を僅かに伸ばした状態はすこし彼の兄をも彷彿させた気がしたのはきっと嫌がるから、黙っておこう。
「ああ、すまない。今…」
抱擁を解いて早く身なりを整えよう、そう言いかけたソムヌスの口を優しい唇がそっと塞いできた事に自然と目を瞑る。
その間も一つまた一つと流れる涙を細い指が捉えて拭ってくれていた。
唇が離れると同じく瞼を開くと、愛しい彼女が微笑んでいて、思わず自分も微笑み返した。
こんなに涙を流したのは幼少の時以来だったと思う。
*******
「──という事で、私の勝手な判断で付き合わせてしまっているのですが…その認めて頂けませんか??」
その夜、ソムヌスがやっと立ち上がれるほどになった頃にヒカリはルティヤを連れてきた。
最初に対面した際に、鏡を見ている様な奇妙な感覚に捕えられた気がした。
ルシスの領主息子として数々の志願者や有識者に出会った中で、これ程自分との身分の差を感じさせない程の堂々とした佇まいにこちらが気圧されそうになる。
「ルティヤ、と言ったな。生まれは何処か?」
「さあ。元々戦争孤児で物心着いた頃には狩人として生きてきたもので。各地を転々と…」
いくつか質問を重ねていくが、どれもこれも当たり障りのない答えばかりで実績と言えばヒカリを助けてくれた事と、彼女が何とか取り持とうとしている事だけだった。
もちろんギルガメッシュもその強さを目の当たりにしたと言うが、謎が多い方がかえって不安の要素を強くするばかりだった。
「──分かった。」
「ルティヤ、よかったわね!!」
その決定に雇われた本人以上にヒカリが喜んでいる事に若干の不快感を覚えたが、そこはなんとか堪える。
ルティヤはそんなヒカリに応えることも無く、無言で部屋を立ち去って行った。
「よろしいのですか」
「ああ…何とも言えないが、危ない所を助けてくれた事に関しては何も言えまい。それにここで断ったとして、ルシスを狙う者の側に付かれてしまってはそれこそ一大事だ。シガイや野獣の事も熟知している様だから、これを断るのは得策とも言えん」
きっとギルガメッシュも同じ様にルティヤを怪しんでいるだろうとソムヌスは汲み取る。
「ふぅ・・・」
「頭痛がしますか??」
ソムヌスが頭を抑えてため息をついたので、ヒカリは慌ててその額に手をかざし始めた。
「いや、大丈夫だ。…?ヒカリ、その手はどうしたんだ」
その言葉に反射的に手をどかそうとした彼女の手をすかさず引き止めて見つめるソムヌス。
前まではとても柔らかく傷の少ない手のひらだったのが、今や赤く盛り上がっており皮が所々めくれたりと荒れ放題だった。
「あ…えっとその…」
「ルティヤに護身術を教えてもらっているのです」
ギルガメッシュのその言葉にソムヌスが一瞬止まったのが分かる。
「・・・・・・そうか」
何故ギルガメッシュや兵達ではなく、新参者の彼に頼るのかと問い詰めたかったのだが、それは無様な嫉妬なのだろうかと考えてやっと口から出した言葉。
「ゴホッゴホッ」
「ソ、ソムヌス様・・・」
咳き込むソムヌスの背をさするヒカリ。
「さぁヒカリ様、もうお休みになられてくだされ。ソムヌス様は私が見ましょう」
でも、と言いかけてギルガメッシュの鋭い眼差しに言葉を引っ込めたヒカリ。
「大丈夫だヒカリ。ずっと看病をしていてくれていたのだろう。今日はもうギルガメッシュに任せて休んでくれ」
2人にそう言われてしまい、ヒカリもこれ以上引き下がるのは我儘だと自覚して部屋から出ていく。
「・・・ソムヌス様、私はどうもあの若者が気にかかりますな」
「ああ。ヒカリを上手く取り込んだようにも思えるが…それは俺の嫉妬なんだろうか」
「愛する者の心配をするのは悪い事ではありません。私もヒカリ様の事が心配なのは同じ事。…しかしそれと同時に力不足なのは痛感致しました。しばらくは様子を見ようと思いますがよろしいですかな…」
「ああ、頼む。俺も早く動けるようにならねばな・・・」