その他詰め合わせ

□忘却
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「こんな遅くまで起きてて大丈夫なんか?」


夜も更ける中、屋根の上で星を見上げていた葉がひかりの気配に気がつく。


「…ちょっとハッキリしない夢に疲れちゃって、目が覚めたの。隣、いいかな?」


ハッキリしない眠りの中の夢。
肌寒い真夜中、白い庭があるその手前の縁側で座る人物がいる。
その人は振り返って、誰かを呼んだ。


そこで夢が覚めてしまう。

満月か星の綺麗な夜は決まって見る夢。


「お。星が流れた。なんか良いことあればいいな。」


ポンと後押しするような葉の手にひかりは我に返る。


「あ、ごめんなさい。今の聞いてなかった…」


「かまわんよ。でも、悩みがあるなら誰かに話せば楽になるかもしれんし、あんま考えすぎんなよひかり。」


にこりと笑んで葉がそう言う。
その言葉に自分が今悩んでいるのだと改めて気がつく。

少し躊躇ったが、今、葉に話さなければきっとこの先誰にも話せずに終わってしまうだろう。


「夢の中で、誰かが誰かを呼ぶ夢を見るの。同じ夢。日に日に夢が覚める度、辛いような悲しいような複雑な気持ちが増していくの」


ぼそりと言った。
されど葉には聞く姿勢があったのだろう。

葉に「そっか」と言われ、彼は再び夜空を見上げた。



「夢には色々あるからなぁ。予知夢やただの悪夢に、記憶の整理や自分の妄想。」


「だけど私っ」


「うん。オイラはお前のその夢が妄想だとか悪夢だとか…そこいらのよくあるものじゃないとは思うぞ。」


ムキになって抗議しようとしたひかりの頭にポンと手を押いて笑う葉。


その瞬間、ひかりの奥に広がる光景。


『歌を歌ってごらん───』




「…?ひかり、」


「!?」


葉の呼び掛けに気付く。


隣にいた葉はいつの間にか、窓の方へいた。


「そろそろ中に戻らんとアンナに締め出されっぞ。」


「あ、うん。…今行く!!」



ハッキリと聞こえた声。


夢の中の誰かが
少なくとも男性の優しい声が。



─続く
 

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