その他詰め合わせ

□母
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座敷童子を見て志乃さんに会って別れてから、薬売りさんの様子が少し変わった気がした。


次の旅籠に着くまで、その視線の先には女性や子供ばかりな気がした。


どこか懐かしそうに、愛しそうに、寂しそうに…


「あら。薬売りさん、もうお風呂上がったんですか?」


ひかりが風呂から戻ると、蝋燭一本の火が揺らめく部屋に夏の夜風に揺れる虫除けの香煙。

彼は浴衣で縁側に座って、何かを見ていた。


「あ、猫の親子。」


薬売りの近くに座って見てみれば、母猫の腹を枕にして眠る子猫の姿。


チラリとひかりを見た母猫も次には目を細め同じく眠ろうと閉じた。


「…可愛いなぁ。あのフカフカなお腹の枕…」


率直な感想を述べるひかり。もちろん、誰に言ったわけでもない感想。


ふと視線を感じた。



薬売りが此方を見ている。


その切れ長の目は、遊郭の女より妖美で口元は珍しい紅で静かな笑みにも見える。


「…ひかり、もっとこっちへ。さあ…」



「は、はい!?…失礼しまっ…」



急に話し掛けられ我に返るひかり。
言われたように、正座をすってそのまま薬売りの後ろに移動した。


すると、
薬売りはひかりの方へふっと体を倒した。


「…この体勢が、子供には落ち着くようで。」


「まぁ。」


膝枕だ。


薬売りは横向きへ寝返って、目を閉じた。


「"一度は試してみたかった"ですね?…それで、子供の気持ちはどうでしたか?」


どこか可笑しくて半分にやけてしまうのをこらえ、質問してみた。


「…いやあ……温かい。」



しばらくしたら薬売りさんは、眠ってしまったけれど起こさないでおこう。



終わり
 

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