その他詰め合わせ
□灯
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賑やかなお祭り。
夜の山を通って着いた村。
屋台の集まった提灯の朱い灯。
傍で歩む薬売りの彼はきっと、この賑やかで人が浮かれている所なんて好まないのだろう。
しかし、薬売りの彼はふと足を止め、鳥居を見上げた。
その横を軽々て駆けていく子供達。
「ねぇ、薬売りさん。お祭りは好きですか?」
先程、自分で<この人は賑やかなのが嫌い>と定義づけていた癖に何故か聞いてしまう。
内心で、自分で自分に困っていると、薬売りの彼が言った。
「なぁに。この神社の主がとても大切にされてると、感じてしまっただけさ。」
ドンッ パラパラパラパラ ドンッ…
「へぇ。花火も上げるのか。」
フッと笑んだ彼の横顔。
それは花火の季節を待ち、その打ち上がりを喜ぶ子供よりも、今、この笑みを見れた私の喜びの方が大きいのは確実。
心を踊らせていると、薬売りの彼が鳥居をくぐり始めた。
そして、それに続く私に誰かが
<恋のことなら任せてちょうだい>
と笑った気がした。
その後、偶然なのか彼が私に髪飾りを贈ってまた微笑んだ。
fin。