FF15

□清き願い
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その日の夜


「それはそれは、残念ですな!まぁ、指導者は常に忙しい身ですから仕方有りませぬな」



ブストとの夕食の席にヒカリも混ざる。

ここへ来てからまともに話したことの無い人物ではあったが、今や昔いがみ合っていたという話しは嘘のようなひょうきんな男であった事に驚いた。


ブスト曰く、旧領主の父は頑固そのもので領主になるつもりのなかったブスト本人は貴族商人として商いをしていたらしい。
しかし、生い茂る森に減らない野獣や昼夜問わず現れるシガイに兄弟も殺され、いずれ旧領主の父も無くなり何とかルシスとの統合に漕ぎ着けたと言う苦労人であったそうだ。



「ブスト殿もいつかルシスへと遊びにいらしてください。私がおもてなしをします。ろくに挨拶もせずに長期間ご迷惑を掛けてしまったので・・・」



「おほっ!ヒカリ様はお気になさらずに。むしろ我が家のマテルが失礼な事をして打首にでもならないかと・・・」



「マテルは凄くよくして下さいましたよ、そんな、打首だなんて・・・」



「ウェッホン」



驚いたヒカリに笑ったブストだが、後ろに控えていたマテルの咳がわざとらしく響いた。





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それから数時間後、ヒカリは湯を浴びた後、自室へ向かい廊下を歩いていく。



「あれ?ソムヌス様」



「ヒカリ・・・」



奥の角から出てくるソムヌスに小走りで近づく。



「今からお風呂ですか??」


「いや、それはさっき済ませた。その・・・なんだか眠れなくてな」



「お昼寝が原因でしょうか・・・あ!良かったら私のお部屋に遊びに来ませんか??」



ヒカリは思い出したようにパンと手を叩くと、ソムヌスを自分の部屋へと誘う。



「(頼むから俺だけにしてくれよ)」



その寝巻きはふわりとした白い柔らかい生地で出来ていて、それを着ている彼女はなんとも可憐だ。

そんな彼女が無意識に無防備過ぎていて、時に不安になる。そう思わずにはいられなかった。



「どうぞ。ビターオレンジのハーブティーです。安眠にいいんですよ。さっきマテルに頼んで置いておいて貰ったんです。いい温度になってるので是非」



「ああ。ありがとう」



礼を言ってカップに口を付ける。
オレンジの香りがとても落ち着く。



「ヒカリ、少しワガママを言ってもいいか??」


「はい!なんなりと!!」


「悪いな。ではこちらに来てくれ」



ソムヌスは椅子から立ち上がると、ヒカリのベッドへと深く腰掛ける。
ヒカリも言われた通りにソムヌスの元へと行く。



「ここに座ってくれ」



ソムヌスは自分の膝を軽く叩く。
ヒカリは笑顔でソムヌスの膝の上に腰掛けると、それを固定するようにソムヌスの腕が腰の後ろから回ってきた。


少し重いが強過ぎず、しっかりと抱きしめられる。
そうして肩と首筋に触れるソムヌスの唇や吐息に少しくすぐられ、思わずからだをすくめた。



「あの、ソムヌス様?」



「ん?」



「その、くすぐったいです…」



「ああ」



短く返事をして、腕をとく。嫌だったのかと目を伏せて俯くソムヌスの頬をヒカリは手のひらで優しく捉えてそっと口付けをする。


それが不意打ちなのに思わずソムヌスは赤面し、顔を逸らして自分の腕で口元を隠した。
遠いテーブルのロウソクの灯りと、窓から薄らと入る月明かりで、その動揺がバレてしまうと思ったからだ。


案の定、くすくすと微笑む声が耳をくすぐった。



「可笑しいか」



「いいえ、愛おしいのです」



「何を。俺をからかうな。年上だぞ・・・」



「でも、年の差なんて恋人同士の中では関係ないんですよね?」



いつも公平に、と努めているソムヌスの思想を引用してみせたヒカリ。


「あまり、煽るな」



いつも可憐な彼女が今夜はやけに艶かしい。その仕草や言葉に身体の中がギュと逆立つ感覚に、押し倒してしまいそうだと堪える拳に視線を置く。



「ソムヌス様、今日はここで一緒に寝ませんか??」



「なっ……どういう…!!」



思わず立ち上がりヒカリから少し離れようと進んだその腕を彼女が引き止めた。
もう、これ以上は理性が効きそうにない。


ソムヌスはヒカリをベッドへと押し倒す。こんな欲を必死に抑える自分で良いのかと、お互い許された関係だが、まだその先は嫌なのでは無いかと不安がよぎるから彼女をそのまま見下ろした。




「ソムヌス様、どうぞ、私を、愛して下さい」
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