FF15
□素直になるという事
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「・・・ぐっ・・・あ・・・」
「目を逸らすな。お前の悩みは全て消えるのだ。そしてこの星は・・・」
ルティヤから無が流れてくる。
周りの景色が、彼の目のように赤らんで行くのに嫌悪感が湧いてきた。
けれども今自分は宙に浮いていて足がつかなければ金縛りのように動くこともままならない。
「・・・誰か…いるのですか??」
「何──」
音を立ててソムヌスが床へ落とされる。咳き込みながら何とか片膝を立てて体制を整えると、ルティヤの振り返る方にヒカリが立っていた。
「ルティヤ?…ソムヌス様も…」
壁掛けの松明のあかりに照らされた彼女は、不思議そうな顔をして2人を交互に見つめる。
「・・・余計な事をしてくれた様だな氷神は」
「ひょう…じん?」
「ゴホッ!!ヒカリ…逃げろっ・・・!!」
「ソムヌス様?一体、何が」
ソムヌスが力を振り絞りヒカリとルティヤの間に立ち塞がる。
剣を召喚しそれをルティヤへと構えた。
「・・・あともう少しだったと言うのに」
ルティヤが手をソムヌスへと向けると、ソムヌスの身体が一瞬で奥へと吹き飛んだ。
「ぐあっ!!」
遠くで転げ落ちたソムヌスの声と音が聞こえる。
「ルティヤ!?何をするの・・・どういう事!!」
「さぁ、邪魔は失せた。もうその様な醜い器に入っている必要は無いだろう」
ルティヤのその言葉にヒカリが困ったように微笑む。その瞳の色はその中で様々な色に光っていた。
「・・・知っていたのね」
「何度もお前を呼び寄せたのは私だ。その度に何故かお前は出てこなかったのだが・・・もう良いだろう?人間の真似事は…」
ルティヤがそう言うと、ヒカリは数歩下がり右手を上へと上げる。
その手からキラキラと星屑がこぼれ落ち、その足元から風が微かに噴き上げた。
「人間の真似事をしているのは、あなたの方ですよバハムート」
その風がヒカリの足元から、ルティヤの方へと吹き抜ける。
剣を翼に纏い、鎧を着込んだ剣の神。
その鎧から覗く鋭い目はヒカリの方を捉えて離さない。
「何故・・・」
「私はもう人間なの。あなたとあの世界にいた時の私はもうほとんどいない。・・・たまたまクリスタルを託した一族の子孫と同じ時代に貴方に似た者を見つけた時は少し驚いた・・・気がするけれど、それは私が望んだわけでも無い、それが運命というもの」
にこりと微笑む彼女に、バハムートは手を伸ばし肩を掴んだ。
「運命などと・・・この世界は私達が生んだ物に過ぎん。お前は自分の血と肉を分けた人間に滅ぼされたのを忘れた訳ではなかろう」
「・・・バハムート、私は私を終わらせる為にこの世界を作った。人はもう自分の力で生きていける愛しい存在・・・」
「人間は無意味だ。私は必ずこの星を消す。そしてお前ともう一度共に過ごそう。人間のいう永遠と共に・・・二度と同じ間違いを侵させはしないぞ」
ヒカリは哀しい笑みを湛え、その瞳は静かに光を元の彼女の色へと戻していった。
「あれ・・・えっと・・・私・・・」
周りを見渡す。
松明の薄明るい色が揺らめく。
何故こんな所に居たのかと悩むが、後ろから呼びかけられて振り向く。
「ヒカリ・・・」
剣を杖代わりに壁にもたれてボロボロのソムヌスが現れた。
ヒカリは慌てて駆け寄ると、その場でソムヌスが嘔吐する。
「ソムヌス様!!一体・・・誰か!!誰か!!」
「ヒカリ・・・無事で・・・」
糸が切れたあやつり人形の如く、ソムヌスは崩れ落ち気を失った。
あとからギルガメッシュが駆けつけて、2人はその場を離れた。