FF15
□素直になるという事
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「ヒカリ!!行くなっ!!」
「嫌っ!!離して!!」
シフトしてきたソムヌスに抱き留められる。
ヒカリはそれでも暴れて、シガイへと手を伸ばしその腕から逃れようとしていた。
その瞬間にギルガメッシュの重い一撃が、こちらへと向かってきていたシガイを壁へと吹き飛ばす。
「あっ!!!アミューーーーー!!!!!嫌ああああああああぁぁぁ!!!」
吹き飛ばされた後のシガイを見て叫ぶ。
崩れ落ちた壁松明があたりに散らばり仄かな明るさが、シガイの肉体に埋もれたアミューの顔を、より一層ヒカリの眼へ認識させる。
残酷にもギルガメッシュが暴れるシガイを切りつけていく。
まず厄介な喉を破壊し、両足を切断していく。その勢いのついた強さはギルガメッシュだけのものではなく、途中からうっすらと開いていた、シガイに付いているアミューの瞳が力を抑えていることを物語っていた。
「嫌よ!!アミュー!!なんで!!生きてるわ!!ソムヌス様!!嫌っ!!離して!!────!!」
必死に抵抗してるのに歯が立たない。
足で踏ん張ろうとしているのに、いつの間にか抱きかかえられていて地を蹴ることも出来ない。
ならばと強く彼の背でも脚でも叩いたり蹴ったりするのに、離してくれない。
「ギルガメッシュ!!やめて!!アミューが死んでしまう!!!この子は生きてる!!やめなさい!!ギルガメッシュ!!!」
あの時相談しろと言ったのに何故と、強く思うが言葉に出せない。
その絶望に声が出ない。
ひとしきりシガイの動きを封じる。腕1本の所までいくとそれも虫の息だ。
ギルガメッシュが跪く。
静けさと同時にソムヌスの腕の力が抜けたのを機に飛び降りるように抜け出すと、ヒカリは恐怖にふらつきながらもなんとかアミューのそれへと近づいた。
うっすらとまだ開いている瞳を見て、ヒカリは沸き上がる気持ちを彼女へとぶつける。
「アミュー、なんでこんな事に!?起きて、ルシスへ・・・帰ろう?あ、そうだ、私、飴を作ってきたの!!・・・あ、えっと落としてきちゃったみたい・・・えへへ、ねぇ、アミュー、今日はね上手く出来たのよ?クレインの果物を使って、見た目もっ、味もっ…ねぇ!アミュー!!」
何度も親友の名を呼んで、頬を軽く叩く。
閉じてはダメだと念じて。
そうすると、その瞳が僅かに自分へ向いたことに気がつく。良かった、今助けるからと神凪の力を手に集中させようとかざそうとした。
その瞬間に、シガイの腕が元のアミューの腕に近い細さになるとヒカリのかざす手を握り退かした。
「アミュー?何を────」
喉を潰されたアミューはできる限り口だけを動かして、その瞼を閉じる。
───しあわせになって───
その瞬間、複数のファントムソードの剣先がアミューを捉えた。
ヒカリはそれを止めようとアミューに覆いかぶさろうとしたが、そばにいたギルガメッシュに羽交い締めされた。
思わずソムヌスの方を見る。
「嫌っ!!やめ────」
ソムヌスが伸ばした手を下へと振り落とすのと同時にファントムソードはアミューへと突き刺さり、彼女は散るようにして無に返った。
見届けた後に、ギルガメッシュの腕の力が解ける。
ヒカリは立ち尽くし、アミューが横たわっていた場所をまばたきも忘れて見入っていた。
「ヒカリ・・・」
呼ばれた自分の名前にゆっくりと向きを変える。
耳の痛みも忘れて、ヒカリはふらつきながらも歩んでいく。
「・・・ああするしか、方法が無かった」
その言葉を聞いたヒカリの視線は、一瞬だけ、ただソムヌスの姿を映しただけだった。