FF15

□素直になるという事
11ページ/15ページ


「ゔ・・・あ゛・・・」


酷く気分が悪かった。
声に出して叫びたいのに、上手く喉が使えない。

それは自分のシガイ化の進行だと急に恐ろしくなる。


「あ゛・・・あ゛・・・」



視力が弱くなり、鼻や耳が利くようになってきた。



「(2人の足音・・・)」



アミューは顔だけを入口へと向ける。
そこへ松明を持ち、こちらへ向いている人影があった。



「これは・・・進行が思った以上に…」



「なんと嘆かわしい…さぞ苦しかろう」



「(ギルガメッシュ様も来て下さったんですね・・・)」



薄れる意識の中、懐かしい顔が脳裏に浮かぶ。

鍵が差し込まれ錠前が地に落ちる音が響いた。


「(これで、この苦しみから・・・)」



「アミュー、今までヒカリをありがとう。せめて安らかに・・・」



ソムヌスがファントムソードを召喚しアミューへと向ける。



「(どうか、ヒカリ様を幸せにしてください・・・私の大切な・・・ヒカリ様・・・)」



アミューは睡魔に囚われるようにそっと瞼を閉じた。


その瞬間だった。



──グォオオオオオオオオオ!!!!



「ぐっ!!こ、れは・・・!!」


洞窟に響き渡る慟哭に2人は思わず耳を塞ぐ。
その空間全てを震わせたあと、ソレは黒い粒子を噴出させてこちらを睨んでいる。



「自我を失ったせいか!!ギルガメッシュ!!気をつけろ!!」



ソムヌスの指示に刀を構える。
2人で間合いを取りつつ相手の様子を見定める。


その間にも、アミューだった体は奇妙な音を立てながら肉を倍増させて巨大化していく。



そしてまた慟哭。
バラバラと周囲の土が降り注いで視界も悪くなる。
そして、シガイは腕を振り回し土まみれの石壁を手当り次第に崩し暴れ、鉄格子もそのひと薙ぎで壊しその境を無くした。



「ソムヌス様、お気を付け下さい!!行動が読めません!!──ぐっ!!」



「ギルガメッシュ!!」



ソムヌスの安全に気を取られたギルガメッシュが吹き飛ばされる。

ソムヌスは急いでシフトを使うとギルガメッシュが壁に叩きつけられる前に救出をし着地をした。



「不覚を取りました」



「…どうやら音に反応しているようだ。いや、鼻も使っているか…」



瓦礫の落ちる音の間にギルガメッシュに考察を伝える。

試しに足元の石ころを遠くの岩壁へと投げつけると、それに反応し音の方向へと身体を向けるシガイ。


息を潜め、アイコンタクトと小さく指で指示を出すソムヌス。
戦場で戦い慣れた二人にとってはいつもの状況でお互いの意思疎通は手馴れたものだった。


しかし、この場が人の住む屋敷の真下だと言う事を二人は考慮出来ていなかったのだ。


シガイが何かに反応して、扉の方を見やった。
ソムヌスは何かおかしいと同じ方を向いた。






********




「(きっとすごく喜ぶはずね)」


鼻歌交じりにローブを羽織るヒカリ。
手に持つ染物の小さな布にまとめられた飴。


クレインで今旬だと言われるオレンジの皮を閉じ込めた飴は、甘さの後に爽やかさも感じられるだろうと作ってみたら綺麗な色のいい出来となった。


昔はこうして色々な果物を閉じ込めて飴を作り、2人でこっそり食べていた事を思い出す。



ルティヤも見当たらず、剣の稽古もすっぽかされて少し不満はあったが、夜更かしになるだろうとふんで昼寝をした。

ついさっき目を覚ましたのは笑い話として話そうと決める。



「──!?・・・何、この揺れ…アミューは、大丈夫かな・・・」



ヒカリは慌てて地下の部屋へと駆け出す。
あそこは天井が堀っぱなしの空間だから崩れたら大変だ、きっとアミューが怯えているだろうと強く思った。


上がる息を整えて扉を開く。
階段を降りるとまたビリビリと空間が揺れバラバラとふる土。



「・・・今の音・・・何??」



振動と共に妙な音が聞こえる。
大きな空洞に風が吸い寄せられたような、そんな恐怖を煽るような。
ヒカリは飴の入る布を握りしめて最後の扉に手をかけた。



「アミュー!!大丈夫!?今地震ッ──」




──グオオオオオオオオオオ!!!!



「痛っ────」



その慟哭に耳に激痛が走った。
思わず瞑った目を再び開ける。



「─────あ…みゅ…???」



目の前に巨大なシガイ。

アミューの無事を確認するように視線を左右へと移動させる。
奥にソムヌスとギルガメッシュがいるのが見えた気がした。
もう一度シガイをよく見る。
見てはいけないと一瞬思ったが、それでも無意識な好奇心は残酷だった。



「あ・・・ああああっ!!!アミュー!!!」



ヒカリの手から飴玉が転がり落ちると、それと同時にシガイへと駆け出した。




*****



開かれた扉から入ってきた人物にソムヌスは目を見開いた。


「何故ヒカリがここに・・・!?」


誰かが教えたのか、いや、そんな事を考えている場合ではない。


「ヒカリ様ー!!お逃げください!!」


ギルガメッシュがわざと大声で注意を促した。ヒカリに危険を伝えると同時にこちらへシガイの気を引きつけようと思ったからだ。



───グアアアアアァアア!!!!



その慟哭にヒカリは耳も塞がず立ち尽くしていた。
こちらを一瞬見た気もしたが、完全に目の前のシガイのある場所を見て固まり、何かがヒカリの手から落ちる。



「まずい!!─ギルガメッシュ!!」



ソムヌスが声を発したと同時に、ヒカリがシガイへ向かって駆け出した。

主人の指示に弾かれるようにギルガメッシュはシガイへと刀を構え突撃していく。



ソムヌスはヒカリの元へシフトした。
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ