FF15

□素直になるという事
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「ヒカリ様、ソムヌス様は・・・」


ソムヌスに貸された部屋。
ベッドに横たわる彼をヒカリが治癒の力を使い見る。

不安にギルガメッシュが口を開くと、ヒカリはため息をついてから微笑んだ。



「ん。大丈夫みたい。・・・でもやけにお酒の臭いがしますね。飲み過ぎたのかしら・・・」



「確かにブスト殿と食事をされた際に勧められるがまま飲まれては居ましたが・・・その後、ブスト殿と2人で奥の部屋と行ってしまわれたので・・・私にも状況が掴めませんな」



「私も、なんであそこに居たのか覚えてなくて・・・うーん。なんで無事かなんて仰られたのかしら・・・」



ヒカリはハーブの入った水差しをソムヌスの枕元へ置く。



「・・・とにかく、二日酔いに効くものを作りました。目が覚めたら飲んで貰えると思いますが・・・ギルガメッシュが付いていてくれますか?」



その言葉に、ヒカリが婚約を解消されていた事を思い出したギルガメッシュ。



「ヒカリ様はどちらへ」



「自室にもどります。なんだか、落ち着かなくて・・・」



頭が重い、胸はなにかざわめく。
嫌な予感がするとヒカリは部屋から出ていった。





*********




何処からか泣く声がする。
ヒカリはソムヌスの部屋を出たあと、自室に戻ろうとしたのだが、自室の奥にある先程の場所から人の泣く声が聞こえるのだ。



「(なんだろう・・・行きたくないのに・・・)」



そう思うのに、引き寄せられるようにしてある扉の前へと辿り着く。


扉を開くと、中からジメジメとした空気が自分をすり抜けていく。
そして、松明を持ったルティヤがこちらに背を向けて立っていた。



「ルティヤ、どうしたの?」



ヒカリの声に気付いたのかそうでないのかは分からないが、そのまま黙って進むルティヤの後を何故かついて行く。


躓いて咄嗟に近くの壁に手を掛けるが、緑色のヌメリに嫌悪感を覚えた。



「あれ?・・・ルティヤ?」


手に気を取られていて、ルティヤがいない。
ヒカリは自分の目の前の扉に気がつく。

その奥からはすすり泣く声が聞こえた。


「(女の子の声?・・・ルティヤではないよね・・・)」



扉に耳をそばだてようとした瞬間に扉が自分の体重で軽く開いてしまう。
仕方ない、とそのままゆっくりと扉を開いた。



「あの、誰かいますか??」



通る自分の声に、中が洞窟のようになっているのが分かる。
そのまま暗闇に目を凝らした。



「・・・うそ・・・もしかして、アミュー??」



「えっ・・・あっ・・・嫌っ!!」



壁松明に照らされた顔は懐かしいよく知っている顔だった。
ヒカリは嬉しさのあまりに近寄るが、そこに鉄格子がある事に気がついて不安が一気に押し寄せた。



「何これ・・・ねぇ!アミュー!!私よ?元気にしてるの!?こっちに来て顔を見せて!!」


鉄格子越しに手を伸ばす。
きっといつものアミューなら走ってその手を握りに来てくれると思っていた。
だが、静けさの後には彼女の声だけが帰ってきた。



「ヒカリ様、お会いできて嬉しいです。・・・でも、私・・・病気だから・・・その、クレイン地方で流行っていて伝染るみたいで」



「病気!?でもここ、地下牢でしょう?それならもっと清潔な場所で休ませて貰って・・・」



「違うんです!!えっと、この向こうは綺麗で・・・この牢屋って近寄らないように目くらましというか・・・領主様が気遣って下さったんです!だから、大丈夫です・・・ここに来たことをバレないようにして下さい・・・ヒカリ様も隔離されてしまいます!!」


ヒカリの言葉に必死に被せるアミュー。これ以上は何も言わずに去って欲しいと祈るばかりだった。



「アミュー…。分かったわ。こっそりお見舞いに何度か来ます…無理してはダメよ?早く治してね。もう少し滞在する事になっているから、そしたらルシスに戻りましょう?…おやすみなさい」



「あう・・・ヒカリ様・・・おやすみなさいっ・・・」



扉の閉まる音に安堵したアミュー。
もう居ないと分かっていても、鉄格子の前まできてヒカリの居た雰囲気だけを噛み締めた。



「ヒカリ様ぁ…私…あなたに会えて…良かったです・・・」



疼く両足をキツく握る。
もう長くはない。


迷惑をかける前に、ソムヌスに殺してもらおうとアミューは決意した。
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