バテン・カイトス
□ふたり
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ヒューズに見とれてしまった。
しばらく自分を見たまま動かないヒカリを見て、そっと彼女の顔に手を伸ばすヒューズ。
「おい・・・ヒカリ」
温かい大きな手が自分の頬を包んだ。
『・・・あ、はい。・・・大丈夫。』
いつも何の気なしに見ていたヒューズの顔をどうしてもマジマジと見てしまう。
突然意識してしまう自分の胸を思わず手で抑える。
どきどきと強く打つ鼓動がバレてしまいそうだった。
「おい、本当に大丈夫なのか?・・・顔が真っ赤だぞ」
『へ?あ、大丈夫・・・、!!』
思わず顔を伏せるヒカリ。
しかし、ヒューズはヒカリの前髪を軽くよけると自分の唇をそっとつけた。
そのまま固まるヒカリ。
「・・・それほどでもないな。」
ふっと離れたヒューズを思わず見上げるヒカリ。
『・・・だから、大丈夫だって言ったじゃない。・・・それに、唇体温計じゃなくてもわかるでしょ。』
そう言って見たものの、ヒューズはこれみよがしに両手を見せた。
「片手は怪我している。もう片手はガサツな手だ。そもそもナスカの熱を測る時にこうしてやれと言ったのはヒカリだろう?」
昔、よく熱を出していたナスカに気づかずに悪化をさせていたヒューズ。
仕事で肉弾戦を得意としていたヒューズの手では額に手を当てたところで感覚が鈍っていて分からなかった。
「お前もナスカも『大丈夫』が口癖だから。・・・それに」
『・・・?』
それから言葉が途切れて、
2人は見つめたま動かなかった。
風が揺らす木の葉の音がしばらくよく聞こえた。
「なぁヒカリ。」
『はい』
「俺はお前の事が好きなんだ。」
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