海賊の部屋

□想い人はお医者様!A
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楽しい時間はゆっくりと、しかし確実に流れていく。
ファミレスに入ったのがおやつ頃。しかし、外はもう橙色と赤色が溶け合っていた。

「・・・っと、もうこんな時間か」

「あ、本当ッスね。もう帰ンねぇと」

「そう。じゃ、出るか」

「うっす!」

連れ立ってレジに行くと、

「俺が払うから。お前、外出とけよ」

ローがシッシッと手でエースをはねのける。
そんな態度に、エースの頬は膨れていった。

「…なぁーに膨れっ面してんだ」

「べっつにー!」

子どもっぽい真似をする(実際にはまだ子どもなのだが)エースに、帽子を被りながらローは小さく溜め息をつく。
それから

「財布の礼っつったろ。だから膨れんなって」

「膨れてねーし!」

そう言いながらも顔をプイッと背けるエースに

「ガキが変に気ィ遣ってんじゃねぇ。少しくらい年上にいい格好させろ」

と、言いながら彼の髪をかき混ぜるように撫でて店を出ていく。
それでもエースは不機嫌そう…というよりは、納得いかない表情をしていた。
先に歩き出しているローを追いながら、ポツリポツリと

「だって…俺めちゃくちゃ食ったのに…」

「あー、確かにお前見た目よりも食ってたな」

「だから―」

「でも成長期ってそういうモンだろ」

「―…は?」

ローが然も当たり前のように言い、エースはポカンとする。
今まで一緒に食事した人には、苦笑されるか、溜め息を吐かれるか、怒られるかだった。
だからいつも自分で払っていたのに。

「普通は怒らねぇか?年下のくせに遠慮もしねぇで凄い量食って、」

「生憎だが“普通”は知らねぇな。確かに驚いたが…まぁ、それもお前らしさだろ」

エースを見ながら言うと、彼はとても驚いたように目を見開き、ローを凝視する。
ローもローで、彼からすれば当たり前のことを言っただけなので、やっぱり不思議そうにエースを見つめる。

暫く見つめあっていると、不意にエースがローの方へ歩き出し

「…は?」

何故かローの頬に緩い平手打ちをお見舞いした。
力はほとんど入っていなかった為痛みは無かったが、本当に急で、ローはエースを見たまま呆けていると

「…喧嘩の必勝法は不意打ち…なんだろ?」

ボソッと呟いてから、悪戯っ子のような笑顔を浮かべてローを見る。
そして、聞こえるかどうかギリギリの声量で

「…ありがとうございます」

ローに伝えた。

「…どういたしまして」

エースの頭に手を置きながら、ローも答える。


「つーか、飯くらいでそんな気にするか?」

「うっせぇな!俺は気にしてんスよ!」



その後、2人は連絡先を交換し別れたのだった。
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