海賊の部屋
□想い人はお医者様!
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≪彼らの出会いは、些細なものだった…―≫
「ん…?何だこれ…財布?」
柔らかなウェーブのかかった髪を揺らしながら、少年は地面に落ちていた財布を拾う。
名前は書いていなかったが、免許やらが入っていた(持ち主の手がかりがあるかと思い、失礼は承知で拝見したそうな)。
「交番に届けたほうがいいよなー」
そう呟きながら、少年は近場の交番へと進路変更する。
進路変更といっても、少年には特に行くあてもなかったので、まっすぐ家に帰るのに、少しだけ寄り道をする程度だったが。
ほどなくして、見慣れた交番に到着した。
チラッと中を覗く。
先客が居るようで、駐在さんと話している。
そんな中に入るのに若干悩んだものの、服装を整えてから、
「すんませーん。財布を拾ったんスけど…」
「おぉ、ありがとう。…ん?その財布…」
先客の影から、優しそうな笑みを浮かべた駐在のおじさんが見えた。それから、おじさんが財布に目を凝らしていると
「あっ、俺の財布」
ゆっくりと振り向いた先客の人が声を上げた。