小説(いただいた小説もこちら)
□☆天空の城
1ページ/2ページ
君を連れ去りましょう
天空の城
音もなく空から舞い散るダイヤモンド・ダスト。
きらきらと朝の光を吸い込んできらめく無数の花びらは、その人をより一層危うく魅せた。
出逢えたことを奇跡だと、思った。
君が大切なものに気づかせてくれた。
どうしよう、とガラにもなく混乱したあの時。
今ではもう、笑い話だね。
「ユウ、雪降ってるさ!」
「んなもん見りゃ分かる。」
「外行こう!」
「は。いやだ」
凛と、強さをたたえた瞳に映る自分の姿がひどく滑稽に感じた。反省なんて知らない顔で、恋人の前で甘えたになる、阿呆面。
笑えるね。
「すげー綺麗なんさ」
「雪なんて毎年降るだろうが」
「んーん、こんな綺麗なんは滅多にないね。オレ、覚えてるもん」
「無駄なことに記憶能力使ってんじゃねぇよ」
「違うさー。オレが覚えてんのは一回分だけ」
他の、どんなに綺麗な雪景色も目じゃない。たった一度のダイヤモンド・ダスト。
宝石よりも価値のある、大切な日なんです。
「ユウを初めて見つけた日だけさ」
「……っお前、馬鹿だろ」
「ほら、無駄じゃないでしょ?」
ふいと逸らされた顔を覗き込んだら、白い手に邪魔された。
強情な、オレだけのお姫さま。
「……やっぱり、馬鹿だ」
呟きながら見上げてきた彼は、ほんの僅か笑っていた。
呆気にとられたオレを見て、したり顔の麗人は。
「…何してんだよ」
「へ?」
「行くんだろ、外」
ああ、俺様な一面が見えだした。結局は折れてくれる、実はやさしい君。
「…うんっ、早く行こうさ!」
「ちょ、ひっぱんな!!」
あの日のこと、君も覚えているでしょう?
白い中に黒と橙、いびつなコントラストが出会った、あの日を。
「ねぇユウー」
「あんだよっ」
「…大好き。」
「……知ってる…っ」
「うん、だよね。大好きだよ。」
「何度も言うな!」
白い景色に黒と橙、それに真っ赤がちょっとだけ混在した、コントラスト。
すごくいびつだけど、だからすごく貴重だと思いませんか?
「何度でも言うさ、大好き、ユウ」
「…チッ…」
大切なんです。手放したくないんです。
本当は連れ去ってしまいたい。誰にも彼を奪われないよう、どこか遠くへオレと一緒に。
でも、許されないならそれでもいい。
「ユウ、愛してるー!!!」
「叫ぶなー!!」
出逢った日と同じ景色の中、少しだけ違う色を混ぜて歩く。君とだけのダイヤモンド・ダスト。
大切なんです。傍にいたいんです。
今だけは君と歩いていたいんです。
永遠なんていらないから、今この時だけ、ふたりを祝福してください、光のシャワー。
「大好き大好き愛してるー!!!」
「一回死んでこい!!」
大切なんです。別れたくないんです。
愛してるんです。
アナタ、たったひとりを。
一生一度の、恋なんです。
連れ去りましょう、
今だけは 天空の城
きっと空に浮かんでる
End...