小説(いただいた小説もこちら)

□◇THE秘境inコンクリートジャングル
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 錆び付いた階段をギシギシ軋ませながら空へ近付く。ビルの壁にしがみつく非常階段から見下ろした街の景色を見た君が呟く。
「大好き」
何が?とは聞かなかった。聞くのは野暮。言葉が無くとも繋がっていたいと願う。僕等の欠片が今だけでも繋がっていてほしい。
「風強いね」
それは寒いということなのかしらん。俺は少し迷って巻いていたマフラーをそっと巻く。
「大丈夫」
寒いでしょと笑う笑顔をもう少し見ていたくて笑いかけた。
 また来ようね。ビルの非常階段軋ませながら降りていった。暖かそうなコートの影、強い風になびいた髪を見送って、手摺をそっと撫でた。コンクリートジャングルの中見付けた秘境が人々の繋がりを暗喩する。錆で汚れた掌は、これからももっと汚れていく。それでも君を守りたいと夢見る。一人善がりの決心が吹き付ける冬の風に凍みた。


  〜終〜
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