小説(いただいた小説もこちら)
□◇君という光
1ページ/2ページ
どうして人間は・・・
他人を傷つける事がうまいのだろう。
一年前、愛していた人を死に追いやったのも人間。
俺を苦しめ続けるのも人間。
俺は、人という存在にむしばまれる。
「レガート!」 「!」 気がつくと、俺ははにぎやかな町のなかにある小さなカフェにいた。
そしてむかい側には全体的に色素のうすい、整った顔をした女・・・否、女のように美しい男、セリウスが呆れた顔をして俺をみていた。
「ちょっと、話聞いてた?今日中に宿さがさないとまた野宿だよ?」
「ワリィι」
「・・・どうしたの?」
少し心配そうな声で俺の顔をのぞいてくる。
「なんでもねぇよ。」
「ふぅん、でも、あんまりそんな顔してると、女の子達がだまってないんじゃない?憂い顔も素敵って。」「はぁっ?なにいってんだよι」
「ふふっでも実際そうみたいだしね。ほら。」
セリウスの指差すほうをみると、大きな宝石のついた指輪をつけたとてもふくよかな貴婦人がちらちらとこっちをみている。心なしか、瞳をキラキラと輝かせながら。
「げっまじかよ。ってかあれ女の子っていわねぇ。」「でも、レガート、年上好きっていってたじゃないかν」
「年上っつっても限度があるだろっ!」
すると、マダムと目があってしまった。口元がニヤッと動く。
・・・来る。絶対に。
「どうでもいいけど、早くここから離れたほうがいいかもねι」
「だなι」
二人は席をたち会計へまわり、外へでた。
外にでると、日が暮れてきたらしく町はオレンジ色に染まっていた。
港町だから、真っ赤な夕焼けが海に沈むのがみえる。
―最後に見たあいつの姿も、真っ赤だった。―
なぜ、あいつは殺された。俺とあいつが違う種族。
人と吸血鬼だったから?
バチンッ!
「っいだ!」
俺はセリウスに両頬を挟むようにたたかれた。
「なにすんだよっ」
「ほっぺに蚊がいたから」「両頬についてるわけねぇだろ!」
まったくこいつは何考えてんだか・・・
「ねぇレガート。」
「なんだ?」
「夕日がキレイだね。」
キレイ・・・?
チノイロヲシタコレガ?
「でも、すぐに夜の闇に変わる。」
・・・セリウス?
そういえば、こいつも俺とは違うが、かなり厳しい環境で過ごしてきたって聞いたことがあった。
こいつも俺と同じか。
「でもね。」 セリウスは空を見上げた。 「夜の後にはまた青い空がやってくるんだよ。
・・・どんなにくらい闇でもまたすぐに澄んだ色になる。空ってすごいと思わない?。」
セリウスは俺のほうを振り向いた。
そして、笑った。
「だから僕も、・・・空のようにはなれないかもだけど、少しでも、明日のことを考えて生きたい。そうおもうんだ。」
そっか・・・
こいつは最初からわかってたんだ。
今日が・・・あいつの・・・俺の恋人、ソフィアの命日だってことを。
そして、それで俺が落ち込んでいたことも。
こいつにはかなわねぇな。
俺は大きな溜め息をついた。
「悪かったな。変な気を使わせて。」
「気にしてないよ。それにたまにはパートナーらしいことしなくちゃね。」
「ははっそっか。」
パートナー・・・か。
不思議だな。
俺を慰めるおまえも人間で、俺が愛したあいつも人間で。
あんなに嫌いだった人間の中にいるのも、
今は嫌いじゃない。
セリウス、俺も空のようになれるだろうか。
あの時神官だったおまえをつれてきた。
その選択はまちがいじゃなかったみたいだな?