novel U

□act.16
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「──…」

 少し離れた場所から誰かを呼ぶ声が聞こえた。

「ん?どうしたの?」

 黒猫は今までリーマスにまたたびの如くすがりついていたが、声に反応するかの様に耳を立て姿勢を正す。

「…ぁ、かいぬし?」

「かもしれねぇな」

 数回目の呼び掛けでリーマスも声に気が付き、腕の中のオッドアイな猫に視線を落とした。

 段々と近付く声に猫はリーマスを見、頬を舐めると小さく、にゃぁ…と鳴く。同時にリーマスの口唇が少しへの字に曲がった。

「降ろせってさ」

「…ん」

 先刻までの笑顔が少しばかり陰り、目を伏せながらリーマスは素直に頷く。
 猫と俺に促され、仕方なく身を屈ませて猫を地面に下ろした感じだ。

「あ…」

 すたっと軽やかに床へ降り立った黒猫はてとてと角を曲り、その姿を見送るリーマスの雰囲気はとても寂しげで…俺の手は自然と鳶色の頭を撫でしまう。



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