novel U
□act.16
1ページ/7ページ
「──…」
少し離れた場所から誰かを呼ぶ声が聞こえた。
「ん?どうしたの?」
黒猫は今までリーマスにまたたびの如くすがりついていたが、声に反応するかの様に耳を立て姿勢を正す。
「…ぁ、かいぬし?」
「かもしれねぇな」
数回目の呼び掛けでリーマスも声に気が付き、腕の中のオッドアイな猫に視線を落とした。
段々と近付く声に猫はリーマスを見、頬を舐めると小さく、にゃぁ…と鳴く。同時にリーマスの口唇が少しへの字に曲がった。
「降ろせってさ」
「…ん」
先刻までの笑顔が少しばかり陰り、目を伏せながらリーマスは素直に頷く。
猫と俺に促され、仕方なく身を屈ませて猫を地面に下ろした感じだ。
「あ…」
すたっと軽やかに床へ降り立った黒猫はてとてと角を曲り、その姿を見送るリーマスの雰囲気はとても寂しげで…俺の手は自然と鳶色の頭を撫でしまう。
.